国産材活用がゴールではない
伐採期を迎える森林資源であり、SDGs、ESGといった観点から、循環型資源であり、炭素貯蔵効果が期待できる国産材を積極的に利用しようという気運が高まっている。実際に、都市部の高層建築を木造化するといった事例は近年、加速度的に増え、国産材利用、二酸化炭素貯蔵効果などを高らかにアピールする。確かに良い傾向ではあるが、少し立ち止まって考えると、国産材活用自体がゴールではなく、森林の循環利用が重要であることを改めて押さえておく必要がある。森林のCO2削減効果のほか、治水、生態系の機能を維持していくためには、木を伐り、製材し、販売した利益を山側に還元し、再造林するというサイクルを回していくことが不可欠になる。
しかし、ともすると、国産材を使うまでで終わっていることが少なくないようだ。林野庁の調査によると、近年、主伐面積に対して人工造林面積は3~4割程度で推移。木材価格が低迷し、造林費用の負担が大きいことにより、森林所有者などが林業経営に関心を持てないことが、再造林が進まない主な要因となっている。多くの住宅事業者は、木材の調達については、プレカット工場任せで、そのプレカット工場は、商社を通じて木材を調達。外材を使用することが主流になっている。川下の事業者は「外材よりも安ければ、国産材を使ってもいい。もっと安くならないのか」、川上の事業者は「確約がなければ、安定した量を供給することはできない」といったように、両者の間には疑心暗鬼が渦巻き、歩み寄る状況にはない。国産材の価格は上がらず、再造林はおぼつかない。
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