大手不動産は軒並みの好業績

住宅分譲は販売戸数減少も利益は増加に

2023年3月期の大手デベロッパーの決算は、史上最高の売上高・利益が相次ぎ、セグメント別でも多くが好調な好業績であった。このなかで住宅分譲事業は計上戸数を減らしながらも利益率を高めた企業が多い。

2022年度は社会がコロナ禍から脱し、経済活動が平常化を取り戻す過渡期となった。企業活動が戻り設備投資などが進み始めるなか、賃貸オフィス市場は付加価値の高い物件への移転需要が顕在化した。また、個人消費が回復するとともに、暮らし方・働き方の変化が進むなかで旺盛な住み替え需要が発生、特に中古マンションの取引件数が高い水準で推移した。その一方で、急激なエネルギーや原材料価格の高騰、金利の先高観などにより先行きの不透明感はぬぐい切れない。

こうしたなか大手デベロッパーの業績は軒並みの好業績であり、史上最高の売上高、利益を更新した企業が多い。

各社の連結決算をみると、三井不動産は売上高2兆2691億300万円(前期比8.0%増)、営業利益3054億500万円(同24.7%増)の大幅な増収増益で、売上高、営業利益、経常利益、純利益のいずれも過去最高を更新。賃貸、分譲、マネジメントの各セグメントの営業利益も、それぞれ過去最高を更新した。24年3月期も売上高2兆3000億円、営業利益3300億円と、売上高12期連続、営業利益2連続の過去最高益の更新を見込んでいる。

三菱地所は商業施設やホテル事業のコロナの影響からの回復などで、営業収益、営業利益、当期純利益ともに過去最高となった。営業収益は1兆3778億2700万円(同2.1%増)、営業利益2967億200万円(同6.4%増)だ。24年3月期は、コマーシャル不動産事業のキャピタルゲインの増加、商業施設・ホテルの回復、国内分譲マンション戸数増加により営業収益1兆4690億円(同6.6%増)の増収の一方、海外のキャピタルゲインの減少により営業利益2640億円(同11.0%減)の減益を見込む。

長谷工コーポレーションは、過去最高となる売上高1兆272億7700万円(同12.9%増)、経常利益882億6500万円(同7.8%増)の増収増益。主にマンション分譲事業の販売や収益不動産の売却が好調に推移したことなどが要因だ。24年3月期の連結業績は、売上高1兆800億円(同5.1%増)、経常利益830億円(同6.0%減)の増収増益を見込む。

東急不動産ホールディングスは、営業収益1兆58億3600万円(同1.7%増)、営業利益1104億1000万円(同31.7%増)の増収増益で、堅調な不動産市況を受けて売上高、利益ともに過去最高となった。実質すべてのセグメントで増収増益だ。24年3月期は営業収益1兆1200億円(同11.4%増)、営業利益1120億円(同1.4%増)と、過去最高の更新を見込む。

住友不動産は増収増益で、特に経常利益は2期連続、当期純利益は10期連続の最高益を更新した。主力のオフィスビル事業の堅調に加え、ホテルやイベントホールなどの施設営業分野がコロナの影響による落ち込み幅が縮小、不動産賃貸事業が増収増益。また、「新築そっくりさん」など完成工事事業、中古住宅の仲介が好調な不動産流通事業はともに最高益を更新、分譲マンションを中心とする不動産販売は減収となったものの利益率が改善し増益を確保した。今期も主要4部門すべてで増収増益を計画する。

野村不動産ホールディングスも、売上高6547億3500万円(同1.5%増)、営業利益995億9800万円(同9.2%増)の増収増益。24年3月期は売上高7500億円(同14.5%増)、営業利益1030億円(同3.4%増)を見込んでいる。

マンションは販売で明暗も
販売価格、粗利益率アップで増益

好業績のなか、各社の住宅分譲事業をみると減収増益が目立つ。計上戸数が減少したことによる売上高減の一方で、粗利益率向上などにより増益となっているものだ。


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