林業は生命へのリスペクトが前提 人間都合の森づくりでいいのか
利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。
「行き遅れの木」が増えている?
最近、あるオンラインセミナーでコメンテーターを務めた。内容は森林投資に関するもので、興味深い議論も行われたのだが、本稿のテーマからは外れるので中身には触れない。紹介したいのは、メインの議論が終了した後のフリートークでの、ある発言である。
日本では森林投資が進んでいないが、そもそも林業が不採算に陥っていたり、境界が不明瞭な森林が多かったりと課題が山積している。それらをどうにかしないと投資も難しいだろうと、私を含めた主催者側のメンバーと何人かの参加者が話し合っていると、ひとりの参加者が「日本の人工林は行き遅れの木ばかりになってしまっている。もっと利用を進めて若返らせる必要がある」と発言したのである。
その人は木のおもちゃの遊び方に関する指導者としての資格を持っているとのことで、林業や木材に関してある程度の専門知識があるようだった。だが、「行き遅れの木」とは、なかなか刺激的な表現で、その場の雰囲気が微妙なものになってしまった。
植え替えを進めるべきなのか?
現在、スギやヒノキの人工林は植えてから50~60年が経過したものが多くなっていて、資源として十分利用できる大きさに育っている。ところが、林業の不振が続く中、この20年ほどは皆伐して再植林を行うことが収支面から敬遠されるようになり(木材の販売収入で植林経費をまかなうのが難しくなっている)、皆伐はせずに間伐でしのごうという方針が取られるケースが多くなっている。
その結果、新規の植林面積は激減し、必然的に若い木は少なくなり、ある程度の大きさ以上の木ばかりが増え続けているというのが人工林の現状である。生産すなわち伐採に適した林齢に達しているのにそれが進んでいないとして、「少子高齢化」という言い方もされるようになっている。
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