旭化成ホームズ、高齢者賃貸のサービスで生活に変化
相談員の後押しなどで生活意欲に高まりも
後期高齢者のフレイル予防のための住まい「ヘーベルVillage」の新サービスについて半年間の実態調査の結果を報告した。相談員とのやりとりで食事や外出の行動が活発になった。
「ヘーベルVillage」は介護を必要としない元気な高齢者に向けた賃貸住宅。2005年から提供を開始しており、2023年2月時点では関東に136棟を運営している。2022年4月からは、同住宅に「安心・安全・健康長寿応援メソッド」を導入し、設計×相談員×しかけの3点から高齢者の交流を促し、健康寿命の延伸を目指している。例えば、月1度の定期面談を行う相談員の役割を大きく変え、疾病などの課題解決やケア視点であったものから、健康長寿の行動を促す位置づけに再設定。入居者のコミュニケーションツールとして、相談員に「イキイキ!応援シート」を配布し、シートにある18項目をもとに面談を進めるようにした。項目には「おすすめの散歩コースやお店の情報交換」、「旬の食べ物を話題にしよう」などくらしの視点を多く盛り込んだ。
また、入居者同士の交流を促すしかけとして、入居者が手作り作品や散歩時の風景を写した写真などを投稿できる「写真館」や、旅行気分で共有体験ができる「バーチャル旅行」、ラジオ体操などを配信するデジタルサイネージも導入した。
同社は、先に開催した「くらしノベーションフォーラム」において、この新サービスについての半年間の調査結果を報告した。指導を行った東京都健康長寿医療センター研究所研究部長の大渕修一氏は、「介護を中心としたサービスではできないことへの対処になりがちだが、できることを生かすべき」と、まずは相談員が入居者への興味を表し、話を聞いて健康につながる行動を促していく大切さを強調した。
新サービスの導入初期から半年後の行動変容の様子を見ると、「活動量」ではほとんど変化がみられなかったものの、「食事」と「交流」において健康度を高める行動が増えたことが分かった。
調理頻度について「毎日2回以上」とする回答が14.5ポイント増加。多品目摂取についても推奨される1日7品目以上の摂取を行っている人が9ポイント増え、3品目以下の人は3.4ポイントの減少となった。また、友人知人との対面での交流頻度が、週1回以上あると回答した人は7.1ポイントの増加となった。併せて、外出頻度についても1日1回以上外出する人が14.4ポイント増加している。ただ、外出頻度の構成比はあまり変化がなく、同社は、できる範囲の行動で少しだけ活動的になったというのが全体的な傾向だとみている。具体的に、相談員とのやり取りで入居者の行動が変化したケースとしては、植物好きの入居者に対し、「写真館」の紹介や運動・食事アプリをインストールしたスマホを貸与することで、散歩などの健康維持活動が向上した結果などが報告された。今回の結果に対し、シニアライフ研究所の伊藤香織所長は「『安心・安全・健康長寿応援メソッド』の適用で入居者の強みをみつけることで、自己効力感が付くようになった。ヘーベルVillageの駅近で外出しやすい立地が生かされ、入居者が自ら健康を維持・向上する行動が行いやすくなっている」とまとめた。ヘーベルハウスへのサービスの転用など幅広い事業への展開を見据え研究を進める。
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