2023.3.28

Looop、新体制でエネルギーフリー社会の実現を目指す

中村社長が会長CEO、森田取締役が社長に

新電力を扱うLooopはさらなる会社の発展に向け4月より代表二人体制に移行する。現社長の中村氏が会長になり、新社長には森田氏が就く。二人体制で短期的、長期的2つの視点を持ち事業に取り組む。

Looopは、2023年4月に、代表二人体制へ移行。現代表取締役社長CEOの中村創一郎氏が、代表取締役会長CEOとなり、新たに代表取締役社長COOとして森田卓巳氏が就任する。

新会長CEOの中村創一郎氏(左)と新社長COOの森田卓巳氏(右)

同社は2011年の創業以来、部材調達や、発電所の開発といった電気をつくる部分から、エネルギーマネジメントや電力小売といった、電気をコントロールし、届けるところまでを一社で担ってきた。しかし、同社の目指す、エネルギーを自由化し、そこから新たな価値を創造するエネルギーフリー社会の実現に向けては、同社の主な領域である再エネ普及の分野のみならず、自律分散型社会の形成や、自由化されたエネルギーを社会に還元する利他的な精神が必要であるという。そこで、今後、エネルギーフリー社会に向けて、ビジョンに共感する個人、団体、企業との協力を図っていく。

今回の代表二人体制によって、中期的な目的である再エネ普及に向けた取り組みは森田COO、長期的な目的であるエネルギーフリー社会への取り組みは中村CEOが担うこととなる。

中村CEOは、6月からケニアに赴き、インフラが整っていない国においてのマイクログリッドの可能性を探していきたいという。「新しいことを見つけることや、パートナーを巻き込んで長期的な関係をつくっていくことは私の得意分野。エネルギーフリー社会に向けて仲間をつくりたい」(中村CEO)。また、森田COOの社長就任については、過去に中国での社長経験があり、経営やビジネス面に長けているとし、2021年頃より打診をしていたそうだ。現在の再エネ事業の多くも森田COOが率いたという。

森田COOは、長期ビジョンは軸として引き継いだうえで、「どのような状況下でも財務面、体力に一定の余白があることで、新しいサービスの設計や企業との協業ができる」と、余白のある会社を目指す。

厳しい新電力市場において
変動型市場での拡大を目指す

新電気料金サービス「スマートタイムONE」は、1年間で8万件の新規申し込みが目標

同社は、事業方針を昨年4月の発表から変更し、新たな電力サービスを提案する。

再エネ普及のネックとなるのが、価格や発電量の面での変動の大きさ。同社は電源なしの新電力「Looopでんき」を扱ってきたが、2022年4月の事業方針説明で、供給力不足や資源価格の高騰といった課題を解決するために、供給量に応じた電源を確保できる新電力への移行を目指すと発表していた。しかし、電力の供給不足や価格高騰の根本的な解決が見通せないなか、電源ありの新電力では、顧客数やサービスの自由度に制限がかかることが明らかとなった。中村CEOは、「昨年1年間、非常に厳しい市況に置かれ、このままの環境では新電力の強みが生かせない。自分たちが勝てる分野は何かを模索した」という。そうして見つけたのが、電力調達を市場からの調達に切り替え、市場連動型の電気料金サービスを提供する方法だ。

こうした考えから昨年12月に市場連動型の新料金サービスへと切り替えた。この「スマートタイムONE」は、基本料金0円で使用状況に合わせた支払を行う構造は前プランから引き継ぎながら、電力量料金に市場価格に基づく要素を取り入れた。需要家は、固定の従量料金に30分ごとに変わる電源料金を加えたものを、使用量に合わせて支払うことになる。電源料金は電力市場(JEPX)のスポット市場価格に基づく。JEPXのスポット価格は太陽光の発電量が多い時間帯で安くなる傾向があるため、電気の使用時間を工夫すれば電気代を抑えることが可能だ。

森田COOは、「変動型の電力サービスは日本において開拓が進んでおらず、この市場を開拓することが会社の成長にもつながる」と市場拡大を意気込む。

第一歩として、ホームページ上に電気料金の変動が一目でわかるグラフを掲載。電力不足が懸念される冬に備えた節電ポイントのキャンペーン展開も予定している。あわせて、電気料金の通知アプリに新機能を追加。直近の利用状況が反映させる当月の電気代予測と、使用量の見える化機能で、電気の使い方の工夫を促す。

電気の調整力を強化
海外パートナーも視野に

「スマートタイムONE」は、昨年12月に、既存契約顧客の移行を実施しているが、3月より新規の申し込みも開始する。1年間で8万件の新規申し込み達成を目標とする。「スマートタイムONE」への電力プラン変更後の既存契約数は2022年12月時点の30万件から約3・5万件減少となったが、想定よりも多くの既存顧客が残ったとする。こうした、想定以上の顧客やPPAなど再エネニーズの高まり、また、IPPや家庭向け蓄電池の販売などの事業が上半期の厳しい状況をカバーできたとし、3月決算は予算を上回る黒字を達成する見込み。
事業については、デマンドレスポンスや蓄電池による電力の制御機能を開発していくなど、電力の調整力を高めていく方針。そのためにも、再エネだけでなくITなどテクノロジーの部分の重要度が高まるだろうとし、海外エンジニアとのパートナーシップも視野に入れ事業展開をおこなっていく。

日本では電気代は固定のイメージが高いが、将来的にITテクノロジーにより、家電や蓄電池が自動で電気料金の安い時間に稼働するなど、電力消費を制御できるようにし、変動型の市場を拡大していきたい考え。