2023.3.17

高まる住まいのデジタルリスク

セキュリティとプライバシー確保が必須に

家電や設備、建材までもがデジタルネットワークでつながり、暮らしが大きく変わりつつある。
ただ、その恩恵と同時に、デジタルならではのリスクが高まっていることも間違いない。
住まいのスマート化が急速に進むなか、新たなリスク管理が求められている。

デジタル田園都市国家総合戦略では2027年度の評価指標として「光ファイバの世帯カバー率99.9%」、「5Gのカバー率97%」などを掲げる。5年後には、こうした新たなデジタル社会が到来する。こうした流れのなかで住まいは急速にその姿を変えていくことになるだろう。

今、スマートスピーカーやスマートフォンで家中の家電や設備機器などを制御し、HEMSなどでエネルギーコントロールも可能となった。さらにはAIを導入して居住環境を最適化する取り組みも広がりつつある。デジタル化、IoT化による利便性、快適性はさらに高まっていくだろう。

さらに社会変化、技術の高度化により、スマートハウスはその位置づけ、役割も大きく変わりそうだ。「家電や設備機器の高度化というモノからの観点だけではなく、通信インフラの高度化によりどう変わっていくか、もう少し幅広く見た時のスマートホームの在り方もある」と、経済産業省 商務情報政策局情報経済課の和泉憲明アーキテクチャ戦略企画室長は指摘する。例えとして、駕籠が進化して自動車になるのではなく、東海道や中山道が新幹線や高速道路になると話した。5Gの普及など情報通信やデジタル通信の高度化により世界観が変わることで、そのインフラの上に立つスマートホームも変わる可能性が高い。

デジタル田園都市国家構想で目指す一つのゴールは、今までバラバラにあったサービスがデジタルを介してつながることで新たな価値、豊かな生活を実現することにある。社会的なインフラ、決済系のインフラ、移動のインフラをデータだけで完結し、最適化することで、サービスがどんどんつながっていく。例えば、自宅で病院の予約をしたら、その情報によって自動でコミュニティバスの手配がされる。さらに言えば、通信インフラの高度化で在宅医療が可能になれば自宅と病院がつながり、病院からの情報が薬局へと流れて薬が処方され、宅配事業者へと情報が流れてドローンで薬が届くといったサービスさえも可能になるのである。

このインフラ最適化のベースとなるのが「データ連携基盤」だ。新たな価値を創出するため多様なデータの連携が必要になるが、データ連携基盤はそのサービス間のデータをつなぐ役割を果たす。デジタル田園都市国家構想では、基本的にこのデータ連携基盤を都道府県や市町村単位などエリアごとに一つ整備することを想定している。

この”多様なデータ”の一つが、暮らしのなかから集められる「イエナカデータ」だ。具体的には、情報家電やHEMSなどネットワークにつながるデジタル家電から収集された、機器のON・OFFや稼働状況、場合によっては暮らしの営みなどの膨大な「イエナカデータ」である。つまりスマートホームは、豊かな暮らしを享受する場であるとともに、それを生み出すデータの取り口となる。スマートフォンに一声かければ、家中の照明が消え、シャッターが下りる、また、エネルギー使用状況を把握して不要な照明を自動で切る、そんな暮らしが今までのスマートホームの価値であったが、そこから大きく一歩を踏み出し、新たなサービスの源泉となるわけだ。
ただ、そんな次世代の住まいは、サイバーセキュリティとプライバシー確保というこれまでの住宅にはなかった新たなリスクを抱える可能性がある。

住まいにもサイバーアタックのリスクが


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