2023.3.22

ウッドステーション、2×4建築パネル推進などで反転攻勢へ

ハーフ住宅×エネカリプラス、モバイル建築も

ウッドステーションは起業から5年目を迎え、2023年度の活動方針を示した。22年度はコロナやウッドショックの影響で成長スピードが鈍化したが、2×4工法の建築パネル化の推進など、新たな挑戦により反転攻勢をかける。

ウッドステーションは19年2月、全国をカバーする大型パネルの供給網の構築を目指し、製材工場、プレカット工場などで構成する「大型パネル生産パートナー会」を発足した。23年2月時点で正会員48社、また建材メーカーなどの賛助会員33社が参加。大型パネルの生産拠点は全国10拠点に拡大する。22年8月にリンケン(山口県)が、22年9月にモック(千葉県)が大型パネルの製造を開始した。23年度にイシハラの明海工場(愛知県豊橋市)での大型パネル設備導入が決定している。また、大型パネルのユーザーである地域ビルダーなどで構成する「みんなの会」の会員数は447人にまで拡大している。

ウイングと業務提携
2×4で工業化を推進

「大型パネルの実力、ファンダメンタルは色あせていない。一層求められる時代が来ている」と話すウッドステーションの塩地会長

23年度は、3つの柱となる新たな挑戦により、反転攻勢をかける。塩地会長は「大型パネルの実力、ファンダメンタルは色あせていない。木造住宅の現場施工を担う大工、職人の減少、また、住宅の省エネ対策の強化が求められる中で、一層求められる時代になっている」と語る。

1つ目の取り組みは、2×4コンポーネント大手のウイングとの業務提携による2×4工法での工業化の推進だ。ウッドステーションとウイングは22年12月、2×4工法の分野において、サッシや断熱材まで組み込んだ「建築パネル化」を推進する目的で業務提携を締結した。WSが在来木造の分野で蓄積してきたデジタル化、情報処理技術を、2×4工法の分野で応用し、現場生産(オンサイト建築)への処方として、2×4工法の分野においても工場生産(オフサイト建築)を進める。

大型パネル生産パートナー会の総会では、ウイングの橋本常務が登壇。「2×4建築パネル挑戦」をテーマに、塩地会長と議論を交わした

ウイングの橋本宰常務は、「住宅・建築業界には、市場縮小、住宅の高性能化による建材の重量化、大工不足、製造員不足、ドライバー不足、地方創生、働き方改革、SDGs、国産材活用への対応など、様々な課題が山積している。このまま何も手を打たなければ、つくれない、運べない、という時代がすぐそこまできている。2023年は大きな岐路となる」と話す。

既存の在来工法の大型パネル生産拠点の拡大と共に、2×4工法の分野においても協力事業者を募り、在来軸組工法、2×4工法、それぞれに対応する兼用ラインを備えた地域拠点、サテライト工場を全国各地に増やしていく。そのサテライト工場を核として、各地域で、川上から川下の事業者が連携するサプライチェーンを構築し利益が循環する仕組みを構築していきたい考えだ。橋本常務は「2×4工法は、少材種、無垢材を使用し、低コストの生産設備で簡易な加工で済む。川上から見れば、これら3つの優位性がある。各地域で建築パネル化による製造ノウハウ・知財の共有を進めることで、資本力がものをいう業界構造を変革していくことができる」と力説する。

ハーフ住宅とエネカリプラスのパッケージスキームを構築

2つの目の挑戦は、「ハーフ住宅×エネカリプラス」の取り組みだ。

ハーフ住宅とは、大型パネルで省エネ、高品質を確保し、さらに「スケルトン・インフィル」の考え方で、設備などは設置し、人が住めるスケルトンの状態で施主に引き渡す住宅。建築完了検査証を取得でき、住宅ローンを組むこともできる。エネカリプラスは、東京電力エナジーパートナーが提供する太陽光PPAサービス。初期費用0円で太陽光や蓄電池を利用でき、再エネで発電した電力の自家消費により、電気代高騰のリスクを軽減する。ウッドステーションと東京電力エナジーパートナーは、この2つを組み合わせたパッケージスキームを構築。22年12月、(一社)省エネルギーセンターが主催する「22年度省エネ大賞」において、省エネルギーセンター会長賞を受賞した。

大型パネルみんなの会の工務店などと共に、東京電力管内エリアでの販売を強化する。

企業版ふるさと納税を活用し
大型パネルのモバイル建築を普及

3つの目の挑戦は、大型パネルを活用した木造モバイル建築の普及だ。

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授で、スタンバイリーク社長の長坂俊成氏の呼びかけでスタートした。サッシ、断熱材などを組み込んだ構造躯体と木造パネルを工場で製造し、パネル単位で分解・輸送でき、現地で迅速に建設することができる大型パネルユニット方式のモバイル建築を開発。平時は、住宅、ホテル、店舗などとして活用し、災害時には応急仮設住宅として利用する。
大型パネルの「みんなの会」の会長を務めるサトウ工務店(新潟県)の佐藤高志社長の協力を得て、試作の大型パネルユニット方式の木造モバイル建築も完成している。

そして企業版ふるさと納税制度により、モバイル建築を活用した応急住宅の社会的備蓄への貢献を、地方公共団体、企業に働きかけていく。企業版ふるさと納税制度とは、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組み。現金による寄付と物納による寄付(併用も可能)があり、物納の寄附として、大型パネルユニット方式の木造モバイル建築を活用してもらう。