いま“幸せ”を目指す

不安の時代に求められるウェルビーイングな暮らしの豊かさ

コロナ禍に在宅時間が増え、住まいへの関心が高まった。
さらに言えば、住まいとは何か、暮らしとは何かが、あらためて問い直されたといえよう。
自然との触れ合いを求めて外部空間とのつながりを重視したり、都市中心から郊外へと住み替えたり、また、家族とのつながりを見直して住まいのなかの個と共の空間を問い直したり──。
コロナウイルスによるパンデミックだけではない。
自然災害の多発化・甚大化、ロシアのウクライナ侵攻など、これまでの日常が崩れ、価値観が大きく変わり、社会に不安感が広がる。
こうしたなか、さまざまな場面でウェルビーイングの向上が求められている。
住まいづくり、まちづくりにおいても、こうした幸福感を高める取り組みが加速しそうだ。

“幸せ”な暮らしとは?
住まい・まちづくりで“心”に焦点があたりはじめた

住まいづくり・まちづくりが新たなステージを迎えそうだ。

デジタル田園都市国家構想をはじめ、社会的にウェルビーイングの向上が強く求められている。

暮らす人の幸福感、満足感など“心”を軸とした取組みが始まっている。

デジタル田園都市国家構想が本格的に動き出している。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を引き継ぐ新たな地域活性化の取組みであるが、大きな違いは「デジタルの実装」だ。地域の暮らしや社会、産業や経済をデジタル基盤の整備により変革し、「大都市の利便性」と「地域の豊かさ」を融合した「デジタル田園都市国家」を目指す。

ここで見逃せないポイントは、その目的として「地域で暮らす人々の豊かな暮らし=Well‐being」の向上を掲げていることだ。「Well‐being」とは「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」を指す。これまでデジタルを活用したスマートシティなどの取り組みは、そのデジタル手法やインフラの議論に偏りがちであった。スマートホームもデジタル家電などの機能の高度化によりどれだけ暮らしの利便性が高まるかに焦点が当てられてきたといっていい。しかし、本来、その目的は人々の幸福感、つまりWell‐beingの向上にあるはずだ。

では、そもそも「幸せ」とは何であろう。身体的、精神的、社会的に良好な状態とは、どのような状態を指すのか。

デジタル田園の指標
心、行動、環境で幸福度を測る

デジタル田園都市国家構想では、街全体が目指す価値観を明示するために指標を導入した。それが「市民の幸福感を高めるまちづくりの指標=Liveable Well‐Being City指標(LWC指標)」である。主観的な幸福感の指標となる「心」、活動実績の指標である「行動」、生活環境の指標である「環境」という3つの領域から「幸せ」にアプローチする(図1)。


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