交歓するモダン「機能と装飾のポリフォニー」展/ポストモダンの住宅デザインは?
交歓するモダン
「機能と装飾のポリフォニー」展
美術、デザイン世界においてポストモダンと言われて久しいが、それでいてその実相となるとはっきりした定義や形態があるわけではないことに気がつく。価値観が多様化するなかで塊として一つにくくることの難しさがあるからかもしれない。いま現在のデザイン界の立ち位置を素人として漠然と考えるなか、東京都庭園美術館で開催されている「交歓するモダン〈機能と装飾のポリフォニー〉」展(3月5日まで)を覗いてみた。世界第1次大戦をはさんだ1910年代から同30年代に世界各地で展開されたモダニズムの形約400点を展示している。“交歓するモダン”のタイトルどおりに絵画、彫刻、家具、食器、洋服、さらにはそれらを包む住宅、建築、都市など数多くの分野の作家たちが横断的に連携、同期し合い様々にモダンの形をつくりあげていった様子がうかがえる。いまのようなインターネットがあるわけでもない時代に時間をおかずして国やジャンルを超え、情報を共有し合う姿は驚異的だ。展示会ではモダニズムの中心的な活動を担い、総合芸術の代表とも言えるオーストリアのウィーン工房やドイツのバウハウスに関係した作家、作品を紹介し、享楽的な芸術の象徴でもあるフランスのアール・デコのファッションの動きなどにも触れている。
ウィーン工房は設立者である建築家のヨーゼフ・ホフマンをはじめハイウエストのドレスをデザインするなど“モードの帝王”と呼ばれたポール・ポワレ、フランスのモダンデザインをリードしたロベール・マレ=ステヴァンら室内装飾家に大きな影響を与えた。
その時代のトピックが1925年に開催されたアールデコ博だ。アンリ・ラパンら当時の代表的なファッションデザイナーたちが新進の室内装飾家たちと協働し、パビリオンに多様な室内空間を出現させた。ソニア・ドローネが建築家と組んだショーウィンドウは、都市を彩り、都市イメージをつくり出す新たな機能を持たせた。フランスを中心に世界中を席巻したアール・デコだが、いかに広く伝播したかは、この〈交歓するモダン〉の展示会場の朝香宮邸がアール・デコの極みであることからもうなずける。主要客室の室内装飾をアンリ・ラパンが手がけた。ルネ・ラリックによるガラスレリーフをはじめとする華やかな室内空間は今、ある種のノスタルジックを伴いながら精神的な安らぎを与えてくれもする。
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