自分の山の木で家を建てる 山への意識高める効果に期待
利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。
製材所が山で新築用材を検分
少し前に自宅(長野県)から車で小1時間くらいのところにある製材所を訪れた時のこと。社長が「そういえば最近、赤堀さんの家の近くに行ったよ」と言う。
聞けば、個人が所有する山林の木の様子を見てきたのだそうだ。何でもその山の所有者が家を建てる計画があり、建築を頼む予定の工務店に自分の山の木を使いたいと申し出たのだという。製材所の社長はその工務店から「使えそうな木かどうかを確かめてほしい」と頼まれ、出かけてきたというのである。
話を聞いていると、その所有者はどうやら私の知人らしい。すでにリタイアしていて林業とは関わりのない仕事をしてきた人だが、山好きな人で私が林業の取材をしていると知り、折りに触れて山のことや木材の市況動向などさまざまなことを尋ねられる。その人ならそんなことを思いつくだろう。社長が検分した結果は「一部だけど、何とか使えるんじゃないかな」ということだった。
面倒で高くつくからやりたがらない
自分の山の木で家を建てるというのは、かつては山間地で当たり前に行われていた。90歳を超えている近所の長老は若い頃に製材所の手伝いをしていたことがあり、普請も行っていたその製材所の依頼でよく施主の山の木の検分に出かけたという。板に書かれた間取り図、いわゆる板図を手に木々を見上げ、必要な木を見定めて製材所に報告する。そんなことをやってのける技量が「オレにはあった」と胸を張ったものだ。
ところが、昨今、普請に施主の所有林の木が使われるというのは、ごく稀にしかないと思われる。林業の不振を受けて、山主の所有林に対する関心が著しく低下しているため、そういうことを施主自身が思いつかないというのがひとつ。仮に所有林のことを思い出してやりたいと思っても、建築士や工務店に面倒がられてしまうという事情もある。
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