「MP木造建築」の訴求で中大規模木造建築市場を加速 市場のプレーヤー数を拡大へ

BXカネシン 特需営業部 MP課 テクニカルマネージャー 村西大介 氏

昨今、木造化への切り替え、いわゆる「ウッドチェンジ」が進んでいる中大規模建築。こうしたなか、BXカネシンでは中大規模木造建築を「MP木造建築」と呼称し、普及拡大を図っている。「MP木造建築」の取り組みの進展と、同社の今後の展望などについて、村西大介テクニカルマネージャーに聞いた。

——昨今の中大規模木造建築市場の変化について教えてください。

BXカネシン 特需営業部 MP課 テクニカルマネージャー 村西大介 氏

従来、木造建築物と言えば住宅が主流でしたが、2010年に成立した「木促法」をきっかけに公共建築物の木質化も着実に進んできました。さらに、2021年には木促法が改正され、この流れが民間の建築物にも波及、一般的なニュースになるほど中大規模木造建築が増えてきています。例えば、2025年に開催される大阪・関西万博のメイン会場の大屋根は、完成時には世界最大級の木造建築となるとのことで大きな話題を呼んでいます。

こうした話題性の高い中大規模木造建築の広がりは、中大規模木造建築に今まで取り組んでこなかった事業者が参入するきっかけになっていると感じています。これまでは、スーパーゼネコンとも呼ぶべき大手企業が筆頭となって取り組んでいましたが、昨今は中堅クラスや地方のゼネコン、設計者などが積極的に取り組もうとする流れが醸成されています。実際、2022年6月に東京、11月に大阪で開催された「非住宅木造建築フェア」に出展させていただいた際も、鉄骨造やRC造をメインに手掛けている設計者やゼネコンの方に多くご来場いただきました。

市場には確実に追い風が吹いており、中大規模木造建築は今、注目の分野と言えるのではないでしょうか。

——中大規模木造建築に注目が集まるなかで、御社ではこれを「MP木造建築」と呼称し、普及拡大を図っています。

中大規模木造建築は、木造非住宅建築などとも呼ばれます。こうした呼称をすべて内包した総称として、当社では「MP木造建築」という名称を2018年に策定しました。MPとは、Multi Purpose(マルチパーパス)の頭文字を取ったもので、「多目的に木造を使用していく」という意味を込めています。また、「MP木造建築」は当社の中大規模木造建築への取り組みを分かりやすくブランド化したものでもあります。

昨年くらいからようやく、取引先の各社でも認知が広まってきたようで、MP=BXカネシンの金物を使った中大規模木造建築というイメージが定着してきたのではないかと感じています。

近年の具体的な取り組みとしては、この2年ほどでさらなる商品拡充に取り組んできました。これまで、中大規模木造建築用の金物は製作金物が主流でしたが、自分で設計できる人がそもそも少ないことや費用がかさむことが課題でした。そのため、できるだけ既製品の金物を使うことが望ましいのですが、今までの既製品は主に木造住宅向けの規格で作られているものだったため、中大規模木造建築で使用することが難しいという問題がありました。そこで、こうした溝を埋めるために、当社ではある程度規格化した金物を発売しました。

例えば、2021年にはトラスの接合部で使える金物として「MPねじ接合システム」や鉄筋ブレースで高強度の水平構面を構成できる「MPブレースシート」、22年には高耐力の柱脚金物として「MP柱脚システム」などを発売しました。なかでも「MPねじ接合システム」は売れ筋の商品です。トラスを組むと様々な角度から木材が組み合わさってきますが、接合部をボルトとビスで構成する引張接合システムとしたことで、どの角度からでも木材を固定することができ、施工性にも優れています。「MPねじ接合システム」を採用した建物は既に十数件の建築事例があり、当社のホームページで紹介しています。

さらには、こうしたMP金物シリーズを使用した規格型の木造平屋商品「MP木造倉庫」なども22年から発売しています。昨今の鋼材価格高騰による鉄骨造の値上がりに加え、SDGsやカーボンニュートラルへの貢献ができることから、発売以来、多くのお問い合わせをいただいています。

また、商品ラインアップの強化だけでなく、22年4月には中大規模木造建築における構造と接合金物に関する疑問を無料で相談できるWEB上の窓口として「構造金物相談所」を開設しました。中大規模木造では構造金物を物件に応じてカスタマイズして使用することも多いため、製品だけをご購入いただいても上手くお使いいただけない場合もあります。そこで、相談所ではお客様から図面をお預かりした上で、構造・接合部の相談、金物の見積り、構造設計者の紹介などを行っています。

「MPねじ接合システム」を採用してトラスを組んだ木造平屋建て保育所及び放課後児童クラブの事例
「MPねじ接合システム」は、ビスとボルトでトラスを構成できる新発想の引張接合システム。360度自由に接合でき、どの角度でも木材を固定することができる。2021年8月の発売からすでに十数件の採用実績を持つ

——今後の目標、戦略などを教えてください。

直近の課題として、まだまだ設計者が限られていることがあります。特に、構造設計ができる人を増やす必要を強く感じています。そのための施策として、オンラインセミナーの開催やコラムによる具体的な設計事例の紹介などを行っています。中大規模木造建築用の金物に対する知識を広く訴求することで、市場のプレーヤー数を増やしていきたいと考えています。

また、構造金物は建物設計に組み込んでもらえなければ売れていきません。こうした意味でも、当社の製品を扱える事業者を今後、どれだけ増やしていけるかが重要です。

「中大規模木造建築と言えばBXカネシンにまず相談してみよう」と思っていただけるような体制づくりにこれからも励んでいきます。

ホームページ上に設置した「構造金物相談所」では、構造・接合部の相談、金物の見積り、構造設計者の紹介などを無料で行っている

☎︎ 0120‐106781