2023.3.3

エクセルシャノン、引違い窓でUw値0.94を実現

樹脂サッシの全国展開へ向けたニュースタンダードに

樹脂サッシメーカーのエクセルシャノンが、「トリプルシャノンⅡx」のフルモデルチェンジを行った。断熱性能を出しにくい引違い窓でもUw値1.0以下を実現した。

気候変動や海氷の減少など、地球温暖化は環境へ大きな影響を与えている。これを受け、政府は2030年に温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標を提言している。その目標に向け、住宅部門では、66%の温室効果ガス排出量の削減が求められており、迅速な対応を迫られる。一方、住宅における熱流出割合の半分以上が開口部からであり、住宅の省エネ性能向上のために開口部への対策は待ったなしだ。実際に、日本サッシ協会の調査では、日本の樹脂サッシ採用率は、2005年の4.3%から、21年には、約6倍の25.9%にまで拡大している。

1976年に樹脂サッシ「シャノン」を発売して以来、樹脂サッシの専業メーカーとして、性能を追求してきたエクセルシャノンは、2050年カーボンニュートラル実現に向けて樹脂窓のさらなる一般化が進むと見込む。

そこで、「トリプルシャノンⅡx」に代わるニュースタンダード商品として、様々な地域、人にとって使いやすい樹脂窓であることを心がけた「シャノンウインドNS50トリプル」を開発した。

驚異の引違い窓Uw値0.94で寒冷地以外でも採用しやすく

同商品は、アルゴンガスを採用し、23の窓種を用意。一部カラーを除き価格を据え置いたまま断熱性能を向上した。フレームの構造を工夫し、屋外側から屋内側に向けて空気の部屋(セル)を多数並べ、配置やリブの入れ方を工夫することでフレーム強度と断熱性能を同時に向上させることに成功。これにより、室内側の表面温度も向上し、結露はさらに起こりにくくなった。

断熱性能に関しては、アルゴンガスでの比較で、開き窓のUw値を従来の0.94W/(㎡・K)から0.79W/(㎡・K)まで向上、引違い窓では1.25W/(㎡・K)から0.94W/(㎡・K)まで向上した。引違い窓でUw値1.0を下回る商品は同社でも初めてだそうで、一般的に断熱性能を実現しにくい引違い窓で高い断熱性を実現したことは大きなポイントだろう。

日本は引き戸の文化があるため、温暖地などでは住宅の窓に引き違いが採用されることも多い。省エネ基準の適合義務化やその先のZEH水準など住宅の高性能化が進められるが、「シャノンウインドNS50トリプル」は寒冷地以外の地域でも採用しやすい窓となりそうだ。

また、ガラスについては、日射熱取得と採光性の高い「クリア」、日射遮蔽に優れ、紫外線を大幅にカットする「グリーン」に加え、高い可視光透過率と高断熱性能を両立する高性能ガラス「ESクリアスーパー」も設定。西日本で「ESクリアスーパー」を展開するのは今回が初となる。

同社の強みのひとつである遮音性能に関しても、引き続き高い性能を保持しており、住宅性能表示・遮音性能の最高等級3(平均音圧レベル 25㏈)を全窓種でクリアしている。

フレームをスリム化
持ち手は大きく開けやすい仕様に

左から橋本幸登志開発技術本部長、池田州充代表取締役社長、村瀬英治営業企画部部長

普及拡大に向けての改良は断熱性能だけにとどまらない。

フレームの見た目の厚さを1~2割程度スリム化し、意匠性を高めた。例えば、すべり出し窓では、かまち部分の見付け寸法を約16%細くした。また、引違い窓では、召し合わせ部分を全サッシサイズで幅50㎜に統一。腰窓サイズで30%、テラスサイズで42%のスリム化となり、トリプルガラスの引違い窓では業界最細の幅を実現した。これに加え、開き窓とすべり出し窓ではデザインに陰影をつけることでよりシャープな印象に変更した。

リブの構造を工夫することで、今までにない断熱性能と、フレームの強度化を実現した

より多くの人が使いやすい窓にするため、引手などにも改良を加えた。

引手の長さは通常の2倍にし、掘り込みも深くした。握力の弱い子供などが両手でつかんだり、爪の長い女性が指の腹で操作できる。トリプルガラスは、そうでないものに比べると重量があるがベアリング戸車を採用することで開閉が行いやすくなっている。
テラスサイズの引違い窓では、引手やハンドルを子どもも大人も操作しやすい高さに調整した。

また、ハンドルの形状をシンプルにし、同じ部屋に様々な窓種が混在した場合でも統一感が出るようにした。

2030年度の総採用数3万棟へ

従前の「トリプルシャノンⅡx」から格段に断熱性能を向上した

住宅の高断熱化にあたっては、窓の大きさや数を減らし、性能を達成するケースも多いというが、断熱性能の高い今回の新商品では、性能等級6、7の住宅でも大きな窓を設置する選択肢がとれる。

今後は、政府目標の「2030年度までに新築住宅の平均でZEH」を踏まえ、2030年度までに同社の樹脂サッシの採用数を2020年度の約1万棟から、3万棟に伸ばすことを掲げる。

現在、協業先のパナソニック ハウジングソリューションズ社滋賀工場で新しくラインを構築し、生産を行っているが、順次自社工場でも入れ替えなどを行い、生産に対応できるようにしていく。

池田州充代表取締役社長は、「いままでシャノンウインドを使いにくいと感じていた方にも訴求できるような商品へとアップデートした。『シャノンウインドNS50トリプル』を樹脂サッシの普及拡大の起爆剤にできれば」と意気込む。