2023.3.7

YKK AP、集合住宅の開口部リフォームを強化 ラインアップを揃え、ドア改修市場の拡大へ

戸別改修を強みに、補助制度を利用し訴求

YKK APは、ドアリフォームの販売を強化する。マンションの戸別改修や、アパート用のカバー改修商品を発売、商品ラインアップを強化し認知度向上を図る。

同社は、2月に「ドアリモ マンションドア」、「ドアリモ アパートドア」の同時発売を行った。2014年に戸建住宅向けリフォーム用玄関引戸「ドアリモ 玄関引戸」を発表、以降、戸建住宅に向けた商品を発売してきた。改修市場の存在感が強まるなか、ラインアップを充実し、現状の認知度が低いドア改修市場の拡大を目指す。

注目すべきは、マンション戸別改修に対応する「ドアリモ マンションドア」だ。マンションストックの現状を見ると、築30~50年のリフォーム適齢期とされるものは約500万戸に上り、引き続きこの数は増加すると見込まれる。

マンションの大規模改修は、防水性の向上や外壁塗装が優先され、開口部までは手が回らないことが多い。そのため、玄関ドアが経年のサビなどでドアの開閉が困難になったり、見た目が悪くなったりしても改修の機会がなかった。そうしたなか、平成28年のマンション標準管理規約の改定で、共用部であるマンションの各住戸の開口部が、管理組合の理事長の承認を受ければ居住者によって改修できるようになった。

こうした流れの中で発売された「ドアリモ マンションドア」だが、その最大のポイントは、短納期を実現したこと。先に発売した「マドリモ 断熱窓 マンション用」の登場で、ドアに対しても短納期で施工できる商品がほしいという要望があったことから開発に取り掛かった。

アルミとスチールを組み合わせたドア枠で大幅な納期短縮を実現した

調整の難しい壁との取り合い部を、現場加工が可能なアルミ額縁にし、スチール枠を規格化。現調キットによる簡単な納まり確認と既設開口の寸法の採寸のみで、作図をせずにシステム発注が行える。これにより、納期を従来の約1・5か月から、実働約14日にまで短縮した。集合住宅での開口部の戸別改修は、納期の長さがネックとなっていたが、「水回り設備などと同じ工事期間で改修を完了できるようになり、扱いやすくなった」(住宅本部 リノベーション事業部 営業推進部 中原輝裕部長)と、市場の広がりを狙う。

戸別改修に対応した商品に関しては、これまで集合住宅で玄関や窓を改修したいというエンドユーザーの声があっても、リフォーム業者は「対応する商品がない」と断るしかなかったこともあり、反響が大きいという。

先立って2021年に発売した「マドリモ 断熱窓 マンション用」では、22年の販売数量が前年の2.5倍で推移、月次では5倍の月もあり、窓の戸別改修は急速に浸透してきている。「ドアリモ マンションドア」の登場により、相乗効果による販売増を見込む。さらに、「ドアの方が新しくなることによる見栄えの変化が大きく浸透度が高い」(中原部長)といい、ドアリフォームの市場拡大に期待がかかる。

実際に「ドアリモ マンションドア」は、販売前から期待の声が高く、イベントの展示では商品の周りに人だかりができるなど、その注目の大きさが垣間見える。

集合住宅の戸別改修に対応した「ドアリモマンションドア」

販売にあたっては、「リフォーム業者の方に、集合住宅でも戸別で開口部の改修が行えるという認知をどこまで広められるか。ここが最初の大きな勝負」(中原部長)だとし、自社とパートナーシップを結ぶMADOショップをはじめ、TDY(TOTO、大建工業、YKK APのアライアンス)で取り組んでいるリモデルクラブ店などに向けて、短納期で他の設備と合わせて改修を行える特長を伝えていく。「金額や工期をはっきりと提示できない集合住宅の戸別の窓・ドア改修は業者の方からしても悩みの種であった。施主の改修への要望に対しその場で返答をするという、当たり前のことを当たり前に行える点がとても喜ばれている」(中原部長)と、他社にない戸別改修向け商品を強みに改修市場を拡大していきたい意向だ。また、エンドユーザーへのアプローチとしては、2021年に開設した断熱性の高い樹脂窓の情報発信サイト「HEALTHCARE MADO」を活用し、ユーザーの悩み解決の方法として提案を進める。

ドアリモ アパートドアは、豊富なデザインとカラーを用意する

販売の上で強い追い風となっているのが、2022年11月に政府が発表した3省連携での補助事業。断熱窓の改修に対する補助事業は「先進的窓リノベ事業」だが、窓と合わせてほかの部分を改修する場合に、「こどもエコすまい支援事業」と連携して補助を受けることができる。つまり、「マドリモ」で断熱改修を行う際に、「ドアリモ」で玄関工事をすれば、そちらにも補助が適用されるというわけだ。同社はこの事業を“千載一遇のチャンス〟と捉え、積極的な訴求を行う。

2月10日には、「窓・ドアリフォーム省エネ補助金ナビ」を公開。同社製品の補助金額と冷暖房費削減効果の目安をシミュレーションで提示し、生活者にアプローチする。

ドア改修を当然のものに

「ドアリモ マンションドア」と同時発売した「ドアリモ アパートドア」は、豊富なデザインとカラーを用意した。塗り替えやシートを貼るなど、様々なリフォーム方法がとられるアパートのドア改修に、新しい要素として「ドアリモ」のカバー改修を提案する。「ドアリモ マンションドア」、「ドアリモ アパートドア」ともに、まずは初年度の売り上げ1億円の達成を目指す。
同社では、昨年秋に、戸建て用のドアリモの価格をわかりやすい表記に統一し、一部商品の値下げを実施した。建築資材の価格高騰が相次ぐ中で、ドアリフォーム市場拡大への意気込みが伝わる。

リフォーム市場においてキッチンやトイレ、浴室などに比べてまだまだ一般的とは言えないドアリフォーム。同社では、「ドアリフォームを水まわり関連と同じような位置づけにまで高めたい」(中原部長)と、ドア改修市場拡大へ向けて取り組みを強化する。