2023.1.5

薄層屋上緑化技術協会、(一社)緑のまちづくり支援機構 「第12回屋上緑化WEB講習会」を開催

グリーンインフラ」をテーマに都市緑化の動向を探る

11月18日に屋上緑化WEB講演会を開催。前回に続き「グリーンインフラ」をテーマに掲げ、建築家・栗生明氏による基調講演などが行われた。

開催に先立ち、薄層屋上緑化技術協会の高橋清人会長が「今後も皆さまの活動に役立ち、緑化業界の活性化につながる情報を発信し続けたい」と挨拶

屋上緑化講演会は、芝生、地被類を用いた緑化システムの施工・維持管理についての研究や都市緑化に関連する情報収集・提供などを行う薄層屋上緑化技術協会(事務局:大阪府大阪市)が活動の一環として年に一度開催。同協会は2021年から(一社)緑のまちづくり支援機構(事務局:東京都文京区)と連携して都市のさまざまな課題に対応する仮設型緑化アイテムの企画・開発検討などを進めており、12回目を数える今回の講演会は同機構との共催により、Zoomライブ配信形式にて実施した。

「緑と建築の物語」をテーマに講演する栗生明氏

グリーンインフラを考える」をテーマに開催した2020年に続き、「グリーンインフラを考えるPartⅡ」として企画。緑のまちづくり支援機構の会長で建築家の栗生明氏による基調講演「緑と建築の物語」をはじめ、緑や建築の分野に関わる4名の講師が、グリーンインフラの視点に立った都市緑化事例などの情報を提供した。

自然との共生を図った建築作品を数多く手掛けることで知られる栗生氏は、「大阪花と緑の博覧会」でのフローリアム109、「浜名湖花博覧会」での水と花の都市、「愛・地球博覧会」でのバイオラング、「植村直己冒険館」、「黄島神殿」「伊勢神宮・式年遷宮記念せんぐう館」など、これまでに自身が関わった博覧会プロジェクトでの体験や建築作品を振り返りながら、「緑と建築の物語」を紹介。「植物や水、土、空気といった自然と人、人工物をつなげて考えるのがグリーンインフラ。それらをつなぐ物語の中で生活基盤を豊かにすることを目指していくべき」と述べた。

続いて、「ヨシ刈りからはじまるSDGs」と題し、アトリエMay代表取締役の塩田真由美氏とたまゆら法人営業本部主任の岡本明氏が講演。ヨシ(葦)は、川辺や湖畔、湿地などに群生するイネ科の植物で、日本でも古くから建築資材などに使われていたが、時代の流れと共に利用用途が減り、管理されないヨシ群落が景観悪化や水質悪化の原因となっている。こうした中、両氏は琵琶湖や淀川(鵜殿)のヨシ群落を、地域を巻き込んだ「ヨシ刈り」のアクションにより保全。収穫したヨシから繊維を取り出し、ユニフォームやインテリアアクセサリーなどに再利用する取り組みを続けている。講演ではヨシ繊維の特長や活用面での可能性、それぞれの活動状況について紹介した。

最後に、千葉大学大学院園芸学研究院准教授の霜田亮祐氏が「文化的景観としての都市の野生」と題して講演。霜田氏は風景計画学が専門。ランドスケープアーキテクトとして、人工的な施設に野生を取り込むことで文化的景観をつくりだすことを信条に、多くの施設のランドスケープ設計に取り組んできた。その実践的な事例として、栗生明氏と共に手掛けた「伊勢神宮・式年遷宮記念せんぐう館」をはじめ、大阪府・北摂山地の既存樹林を自然・文化資源として捉え、ドイツ型の樹木葬を実現する“風景墓苑”として整備した大阪北摂霊園「木もれびと星の里」などを紹介した。