日建ハウジングシステム、アマケンテック 竹CNFを使用した遮熱塗料を開発
放置竹林問題解消に向け、竹活用を加速
日建ハウジングシステムとアマケンテックは竹CNF(セルロースナノファイバー)を原料に混ぜ込んだ遮熱塗料「ナノ・クールA CNF」を共同開発した。竹の活用を促進することで、放置竹林の解決を図り、SDGs、カーボンニュートラルにも貢献していきたい考えだ。
「ナノ・クールA CNF」は、日建ハウジングシステム(東京都文京区、宇佐見博之代表取締役社長)とアマケンテック(熊本県天草市、米田賢史代表取締役社長)が共同で開発した、竹CNFを原料に混ぜ込んだ遮熱塗料だ。竹CNFはその熱伝導率の低さから近年、住宅用窓サッシなど建材としての活用が期待されている素材。一般的な遮熱塗料と同等の遮熱効果を確保しつつ、耐候性を1.3倍に高めることに成功した。これにより、塗り替え回数を減らすことができるため、トータルコストやCO₂排出量の削減に期待できる。
日本では戦後に多くの竹が植えられ、日用品や家具、建具として利用されてきたが、次第にプラスチックなどが台頭してきたことで需要が減少。その結果、伐採されずに放置された竹林が日本各地で発生し、下草など他の植物の日照不足を招くことで痩地や生態系の変容など、森林環境の荒廃を引き起こす「放置竹林問題」が全国的に広がり、解決が急がれている。
ただ、竹の活用には課題も多い。例えば、単に竹林問題を解決するだけならばバイオマス燃料にしてしまうのが一番早いが、竹は燃焼時に「クリンカ」というカリウムを多く含んだ灰を排出するため、それが燃焼炉などを腐食させる原因になる。また、バイオマス燃料にした場合その価格は非常に安いため、山側への還元も十分に行えず、ビジネスとして成立しない。
そこで、日建ハウジングシステムは竹の新たな用途開発を行い、地域産業の活性化につなげようと、7年ほど前から竹を産業利用する取り組みを行ってきた。その一環として、竹CNFの製造・開発に着手、2017年度には環境省の「セルロースナノファイバー活用製品の事業委託業務」に採択され、同社をはじめ、アマケンテック、中越パルプ工業、熊本大学、鹿児島県薩摩川内市など13の企業・機関で構成される産官学連携コンソーシアムを組織し、竹CNFを使用した建材の開発などを行った。2019年にこの事業は終了したが、日建ハウジングシステムとアマケンテックはその後も共同開発を進め、今回、「ナノ・クールA CNF」の発売に至った。製品開発に関して、アマケンテックの環境事業部の村田章后氏は「当社で扱っている塗料は水性のため、親水性が高い竹CNFとの相性は良かったが、これを塗料内にうまく攪拌することに苦労した」と話す。
原料となる竹CNFは、コンソーシアムにも参画していた鹿児島県薩摩川内市などで伐採された国産竹を使用し、同じくコンソーシアム参画企業の中越パルプ工業が製造、販売を行う。
2022年11月には薩摩川内市内の複合商業施設「SOKO KAKAKA」の屋根および外壁に「ナノ・クールA CNF」を塗装し、塗装していない場合と比較して室内温度を4℃下げられる実証も得た。
販売価格は1万円/㎏で、今後は「SOKO KAKAKA」の事例を軸に全国へ製品の普及を図ることでSDGsやカーボンニュートラルに貢献していきたい考えだ。
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