ナイス 国産材利用など、既存事業を深化
環境保全に注力し、持続可能社会の実現へ
ナイスは、新たな企業理念を立ち上げ、既存事業の深化と新規事業の推進を図っている。今後も「木」を中心とした事業を展開し、環境保護を目指していく。
ナイスは、2022年6月に持続的な成長とさらなる企業価値向上を図る目的で、「『彩りある未来』を想創(ソウゾウ)します」という企業理念を新たに制定し、既存事業の深化と新規事業の推進に注力する方針を定めた。
こうした中、同社の2022年上半期の決算は、売上高が前年同期比9.3%増の1140億1800万円、営業利益は24億8400万円(同33.0%減)の増収減益となった。売上高の増加は、主力である建築資材事業の伸長が主な要因で、総合的に販売戦略を強化したことで、建築資材事業の売上高は943億7200万円(前年同期比13.8%増)と順調に推移した。
ただ、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でエネルギー価格が高騰し、輸送コストや資材の価格が世界中で値上がりしたほか、日本では記録的な円安となり、輸入コストが大幅に増加するなど厳しい経済状況が続いたことで製品原価などが圧迫、建築資材事業の営業利益に関しては30億3700万円(同37.6%減)と大幅に下落し、全体を押し下げた。
国産材利用幅を拡大
ZEHのトータルサポートも
建築資材事業の売上増は、新たな取り組みが奏功したものだ。具体的には、全国の製材業者などとのネットワークを生かして構築した木材流通サプライチェーンである「多産地連携システム」を活用し、特定の産地に頼ることなく、日本全国から多種多様な優良材をストックすることで国産材の安定供給と需要創造に取り組んだ。
また、構造材や羽柄材、内外装材に至るまで、住宅一棟分の木材を国産材でパッケージ化して提供する「国産材プレミアムパッケージ」の提案や、「人と木と、ときめきをもっと。」をキーメッセージに据える木質空間「WoWooDTM」の訴求も行った。
さらに、従来、木造軸組住宅において横架材の9割近くは輸入材が使用されていたが、実際の2階建や3階建木造軸組住宅において横架材を国産材スギ製材に代替して構造計算を行い、構造上問題ないことを実証、国産スギの可能性を広げるとともに、製材の歩留まりも向上させることに成功した。積極的に国産材を活用しつつ、同社オリジナル商品の「GywoodⓇ」や「ObiREDⓇ」の提案も併せて行ったことで、住宅・非住宅問わず様々な建築物の木造・木質化を推進した。杉田理之代表取締役社長は、「様々な事業を通じてあらゆる空間の木質化をさらに加速させていく。グループ全体の総合力を一層高めていき、さらなるシナジーを生んできたい」と話す。
また、2025年の省エネ基準の適合義務化や、2030年に予定されているZEHレベルへの適合義務化など、新築住宅における省エネ基準の強化が図られる中で、建物の木造・木質化だけでなく、省エネ性能の強化を支援する取り組みも開始した。
同社が運営し、工務店の住まいづくりをサポートする「ナイスサポートセンター」において、工務店やビルダー向けにエネルギー商材から建材までをトータル提案するだけでなく、光熱費や外皮性能などの省エネ計算、長期優良住宅をはじめとする各種申請の代行など、ZEHに関する業務を一気通貫でサポートする「スマとく」を7月から開始している。
住宅事業はリフォームが順調
来期以降も見据えた計画を進行
一方、住宅事業については、2022年上半期の新設住宅着工戸数が44万2000戸と前年同期比で0.7%減少したこともあって、既存住宅流通の強化・拡大を図っている。
同社は従来から「横浜・川崎」エリアに強みを持ち、安定した顧客基盤を確立しているが、2022年4月に新設したリフォーム事業部では、この基盤を最大限に活用してリフォーム需要を着実に獲得。建築資材事業で展開する「多産地連携システム」などとのシナジーを生かし、顧客ニーズに沿った資材の提案を行っているほか、首都圏中古マンションの買取再販事業についてもグループ会社の強みを発揮して品質の高いリノベーションマンションの提供に努め、売上戸数、契約戸数共に増加した。
しかし、新築の戸建住宅、マンション販売の売上戸数が前年同期比で減少したことから住宅事業の売上高は147億4300万円(同11.7%減)、営業利益についてもマイナス1億9500万円と、依然として赤字が続いた。
なお、2023年1月~3月期に売上を見込む「ノブレス富沢WEST」(宮城県仙台市)、「ノブレス駅東公園」(栃木県宇都宮際)、「ノブレス浜松早出」(静岡県浜松市)の3棟の免震マンションの契約は順調に進んでおり、2023年3月期通期の業績予想は2022年5月に公表した当初の予想を上回る売上高2280億円、純利益36億円を見込んでいる。
また、来期以降に向けては、設備投資の効果も期待される。2022年10月に同社グループにおける首都圏最大の物流センターである関東物流センター(埼玉県入間郡越生町)の第2期工事が完了し、既存の1棟に加え、2棟の倉庫を新設した。同物流センターに首都圏全体を見据えた木材製品の保管、集約をし、首都圏物流におけるストックヤードの要として運用を行っている。
加えて、立地条件を考慮し、首都圏の物流センターを機能的に再編、ストックヤードと現場配送の拠点を機能別に分別して配置した。今後は現場配送機能の中核を埼玉県越谷市の「越谷物流センター」に据える考えで、こちらの建て替え工事も予定している。
住宅着工数の減少が進み、住宅業界は厳しい状況が続くことが予測される中、同社では今後も、「木」を中心に事業を展開し、SDGsや脱炭素、地球環境の保護に貢献していきたい考えだ。
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