相互接続の広がりが市場拡大の鍵 データ連携基盤の構築で新サービス創出にも期待
拡大必須の注目マーケット スマートホーム市場
2023年はスマートホーム市場が大きく動きそうだ。それぞれのプラットフォーマーが独立し、一つのアプリで家中の機器をコントロールできないという不便さの解消に向けた動きが進む。さらにデジタル田園都市国家構想が市場環境を大きく変えそうだ。
デジタル技術の進化、その住まいへの導入が加速しそうだ。
日本では、1990年頃からホームオートメーションを軸とする”未来住宅”の取り組みが始まった。インターネットの一般化にともない、家電などをインターネットに接続するIoT機器が登場、さらに省エネ意識の高まるなかで、HEMSを核としたエネルギーマネジメントの導入が広がった。また、2010年代後半にはAmazon Echoなどスマートスピーカーが登場し、音声による機器制御が進み、住宅のスマート化が身近なものになった。
技術の進化、社会の変化のなかで、未来住宅、IoT住宅、インテリジェントハウス、スマートハウス、スマートホームとさまざまな呼ばれ方をしてきたが、こうした住まいが一般的に広がったとはいい難い。スマートホームサービス「スペースコア」を展開するアクセルラボが2020年に行った調査によると、国内のスマートホームの認知度は56%と過半数に達してはいるが、実際にスマートホームを導入している人は1.8%に過ぎない。
その一方で、住宅のIoT化、デジタル技術の導入は着実に進んでいる。エコーネットコンソーシアムによると、「ECHONET Lite(エコーネットライト)」を搭載した機器の累計出荷台数は1億2630万8965台であり、スマートメーターはほぼ全世帯に普及、エアコンもそれに準じる台数に達している。また、機器のIoT化は家電以外にも広がり、電気錠を備えるスマートドア、スマホで制御できるシャッターなど建材にまで広がっている。
スマートホームが広がらない理由としてさまざまな見方があるが、最新技術による利便性ばかりが前面に出て、生活スタイルを大きく変える、暮らしの困りごとを解決するといった具体的な姿を描いてこれなかったという指摘がある。簡単に言えば、スマート化すれば便利だが、なくても困らないといったことなのではないだろうか。
もう一つ、サービスや機器の供給側の課題もある。これまでIT家電などを手掛ける家電メーカーなどは囲い込み戦略を取り、相互接続が進んでこなかった。メーカーのクラウドサービスを連携するWeb APIが登場、エコーネットコンソーシアムも2018年にエコーネットライトWeb APIのガイドラインを策定しているが、なかなか広がっていないのが現実だ。つまり、スマート家電ごとにアプリが必要であり、ユーザーが使いにくいのである。
こうした状況が大きく変わろうとしている。米国のConnectivity Standards Allianceが2022年10月に新たなスマートホームの共通規格「Matter(マター)」を発表した。これは異なるメーカーやプラットフォームのデバイス間の相互接続性を保証するもの。つまり、マターに対応していれば、グーグル・アシスタントやアマゾン・アクセラでも動かせるということで、ユーザーにとっては対応製品の幅が広がるという大きなメリットを生む。
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