〝省エネ性能表示〟を見直しへ
必須事項を絞り込み、わかりやすく・取り組みやすい制度へ
国土交通省が「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」の見直しに向けた検討を開始した。より分かりやすく使いやすい制度へとあらため、行動変容を促す。
国土交通省が「第1回 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」(座長:中城康彦・明海大学不動産学部教授)を開催、新たな省エネ性能表示ルールの検討を開始した。
今年6月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が改正され、「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能の表示制度」が強化されたことを受けての対応で、新たな表示ルールの検討などを進める。
建築物省エネ法では「建築物の販売・賃貸事業者は、省エネ性能の表示に努めなければならない」と規定しており、その表示制度が平成28年4月からスタートしている。今回の法律改正により変更となったのは「表示事項・表示方法などを国土交通大臣が告示で定める」となったこと。さらに、告示に従って表示していない場合は勧告、さらには勧告に係る措置を取るように命令することができる。
第1回検討会では、表示ルールに係る論点・検討の方向性について検討を行った。国土交通省が示した「論点・検討の方向性(案)」では、新たな表示制度について「消費者にとってわかりやすい」、「販売事業者にとって取り組みやすい」ことを重視し、”実現可能”な省エネ性能表示制度の仕組みを目指すとした。
例えば、現行の告示では「評価年月日」、「第三者認証・自己評価の別」、「設計一次エネルギー消費量の削減率」を必須項目に、全10項目の表示を遵守事項としており、表示する情報量は多い。必須事項を絞り込むこと、必須事項と推奨事項に区別する、といった検討を想定した。
一方、一次エネルギー消費量については、現行告示が設計一次エネルギー消費量の基準一次エネルギー消費量値からの削減率の数値表示、誘導基準・省エネ基準との関係のバー表示、一次エネルギー消費量基準への適否を表示している。また、告示事項以外ではBELSの運用として★の数での多段階表示を行っている。2025年度の省エネ基準の適合義務化、義務基準のZEH水準への引き上げなども踏まえ、わかりやすい設定方法を検討する。さらに、非住宅建築物では「誘導基準に適合しているか否か」を表示しているのに対し、住宅では「省エネ基準に適合しているか否か」を表示しているという不整合もある。
来年2月頃に表示ルール(案)をとりまとめ、4~6月頃に関連告示を公布、令和6年4月の改正法に基づく表示制度の施行を目指す。
告示で定められた10項目の表示事項
① 建築物の名称。ただし、建築物が一戸建ての住宅である場合にあっては、当該建築物の名称の表示を省略することができる |
② 評価年月日 |
③ 第三者認証(所管行政庁又は登録建築物エネルギー消費性能判定機関等が行った認証をいう。)又は自己評価の別 |
④ 第三者認証の場合にあっては、認証を行った機関の名称 |
⑤ 設計一次エネルギー消費量の基準一次エネルギー消費量からの削減率 |
⑥ 基準一次エネルギー消費量、誘導基準一次エネルギー消費量及び設計一次エネルギー消費量の関係を明らかにした図 |
⑦ 一次エネルギー消費量の基準に適合しているときは、その旨 |
⑧ 外皮性能の基準に適合しているときは、その旨(住宅で適合の場合はUA又はηAC、非住宅で適合の場合はBPIの表示) |
⑨ 建築物の一部について建築物のエネルギー消費性能の評価を実施した場合にあっては、建築物の一部の評価である旨 |
⑩ 第三者認証の場合にあっては、第三者認証を表すマーク |
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