木造の時代へのステップ/木を知らない森の民

木造の時代へのステップ

脱炭素社会への波に乗って木材産業そして木造建築が勢いを増している。住宅に始まって一般建築、それも中髙層建築へと木造化が進む。そのための様々な法整備も急ピッチだ。木造建築は炭素を固定することから木造建築による都市づくりは第2の森づくりとまで言われるようになった。国土の7割が森林でありながら眠り続けていた国の木の覚醒だ。

だがどうだろう。あまりに急に光が照射されたために、建築業界を含め木材関連業界が寝ぼけ眼の状態で、何か戸惑っているような気がしてならない。ウッドショックでさえ、国産材の出番です、と言われながら期待されたように調達できない。山元―丸太―製材―設計・建築とつながる足腰の弱さが露呈された。木材産業の構造問題はもちろんある。ただ、それだけではない。木材を使う設計事務所、工務店、建築業界に「いざ、木造建築を」とカケ声をかけても“木”への知識が極めて乏しい。建築家も「学校で木なんて勉強しなかったし」と口ごもる。とても髙層建築の木造化なんてすぐに対応できる状況にはないことがわかる。山元の林業家も言う。「建築業界の方々と話していると、木のこと、さらには樹種のことを知っている方が少ないのに驚きます」。木は生きもの。樹種それぞれが特性、個性を持つ。同じ樹種でも地域によって強度など差がある。杉、ひのき、松、カシ、ヒバ、カラマツなどそれぞれ樹種の性質を見極め、もっともふさわしい適材適所の使い方を先人たちはしてきた。それが失われてきている。


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