住宅はストレス解消の基地に/住宅の評価は文化的尺度に
住宅はストレス解消の基地に
一昔前に流行語になったTVのCMコピーに「亭主、元気で留守がいい」というのがあった。笑い話と一蹴することは簡単だが、どうもこのコピー最近再び唱えられそうな気配だ。いうまでもなく原因は新型コロナウイルスだ。コロナ禍がさすが3年となるとウィズコロナ生活がすっかり身についてきてしまった。テレワークがすっかり日常化し、これまで家にいないはずの亭主の姿をしょっちゅう目にすることになる。家事を手伝ってくれたり、子どもの保育園への送り迎えをしてくれる―などそのメリットを大いに享受するうちはある意味、コロナ様々という面がなきにしもあらずだ。ところが、ここにきてどうも雲行きが怪しくなってきた。亭主の姿がうっとおしい、というのだ。それでなくとも、週休3日制だとか長期休暇が一般化しつつあるなか、亭主と一緒に過す時間が一気にふえる。仲良し夫婦や子育てパパのほほえましい場面も見かける。ところが、しだいに本音もチラホラ。一緒にいることで夫婦それぞれが自由時間が削られることへの不満、ストレスだ。情緒的に不安定で、虚脱感にさいなまれる精神的に不健康な人がふえている。
これも一昔前だが、主婦たちの赤裸々な実態をルポした「妻たちの思秋期」がベストセラーになった。仕事に追いまくられ、妻たちを顧みない夫の生き方がいかに妻に精神的ストレスを与えているかが描かれていた。昭和の時代の働き方からくる夫婦崩壊の図だ。ところが今、コロナ禍で在宅期間がふえているのに一人での自由時間が欲しい。自由時間を楽しむ居場所が欲しいという不思議な構図となる。まあ、愛情の有無とは関係なく、べったり一緒に、なんていつまでも続くはずがないわけで。仲間との戯言でも、寝室について結婚当初はダブルベッドだったが、歳月が経つうちやがてツインベッドになり、いつの間にか寝室も別になった、が共感を得たりする。家族の団らんの重要性など言うまでもないが、過ぎたるはおよばざる、ということもある。ほどよい距離感が必要なのだ。一緒に居るが故に、グチったり、言わなくていい文句を言ったり―。子どもたちの“思春期”への気遣いが叫ばれるが、今はそれ以上に妻はもとより夫の“思秋期”にも思いを馳せるストレス対策が求められるということだろう。
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