越後妻有「大地の芸術祭」へ/“地域の底力”を実感

越後妻有「大地の芸術祭」へ

夏の締めくくりに越後妻有「大地の芸術祭2022」に出掛けた。コロナ禍で1年ずれての開催だが、会期は4月から11月13日までの長期になった。2000年から始まった3年に1度のトリエンナーレで今回が8回目だ。過疎、高齢化が進む日本有数の豪雪地、新潟県の十日町、津南町を会場に展開される国際芸術祭。東京23区よりも広いフィールド、それも山あり谷ありの急峻な地に100を超える集落を巻き込む。廃村(部落)、廃校、廃屋―と失われゆく物事にアートの魔法を吹きかける。ただ失われゆくものを愛惜するのではなくヒト、モノ、コトを再生する強い意志を込めた芸術祭だ。ある意味、アートの力をどこまで証明できるかのアーティストたちの挑戦の舞台でもあり、同時に廃れゆく地域に歯を喰いしばって、しがみつくように暮らす人々とアートというイベントを協働して開催することで人々の心の活性化をも期待しての世界でも希な実験的な芸術祭とも言える。自分としては2006年(第3回)から始まって今回で3回目の訪問となるが、いまや来訪者は55万人、うち外国人も10%、経済波及効果も70億円近い。20年を超える歳月を重ねるなかで“妻有方式”として世界にも知られる大イベントの風格のような雰囲気さえかもし出している。今回の総作品は333点で、このうち13か国・地域の作家95組による123点が新作だ。施設も整備され、十日町市の越後妻有里山現代美術館MONET(モネ)はその名にふさわしいミュージアムにリニューアルされている。広域の会場内の廃校なども芸術祭の拠点施設として蘇っている。科学館も兼ねた「森の学校」もある。驚いたのは清津峡のトンネルがアート作品として改修され人気を集めていたことだ。全長750㍍のアートトンネルは途中に設けられた見晴台で日本3大峡谷の一つとして知られる清津峡の大自然を体感させ、終着のパノラマステーション(ライトケープ〈光の洞窟〉)は清津峡の景観を水盤に映し出す幻想的な光景が人々を敬けんな気持ちにさえさせる。


この記事はプレミアム会員限定記事です。
プレミアム会員になると続きをお読みいただけます。

新規会員登録

(無料会員登録後にプレミアム会員へのアップグレードが可能になります)

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。