林業は木の家づくりに貢献できるか?

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利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。

木の見栄えはどうでもいいのか?

10年近く前、木の家づくりに関するある連続講座で「木の家づくりは林業に貢献できるか」とのタイトルで講議を一コマ担当したことがある。その際の問題意識は、大壁工法や乾式工法が主流になり、コストをなるべくかけない家づくりが行われるようになっている中、木材の品質について強度や含水率は問われるものの、節がないこと、あるいは少ないことや目合いの良さといった見栄えに関することはそれほど要求されなくなっており、そのことが林業を不振に陥らせる原因のひとつになっているのではないか──というものだった。

もちろん、強度がどのくらいで含水率がどの程度にまで下がっているかは、木材の品質を評価する重要な指標であり、木造住宅の構造を安定させる上で欠かせない情報だと言えるだろう。今の家づくりでは、構造材に関して言えば、木は見えない部分に使われるケースが圧倒的に多い。見栄えはどうでも強度が確保され、しっかり乾いていて寸法が安定していればそれでいいではないか、という言い分はもっともに聞こえる。

だが、節の有無や程度、目合い(年輪幅)というのは、見た目の問題だけでなく、実は木材の品質にも深く関わっている。節が多ければ強度上のマイナス要素になるし、目詰まりの良い木の方が強度も高くなる可能性が高い。

「良い木を安く」と言われても困る

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自然素材である木は個体差が大きく、目が粗くても強度が高い木はある。しかし、目が詰まっている木は、それだけ成熟材と呼ばれる15年輪以上の部分が材の中に多く含まれることになる。木は中心から15年輪くらいまでの部分は未成熟材と呼ばれ、強度的には低い傾向がある。そのため、年輪が詰まっていて15年以上の成熟材が多く含まれている木の方が強度が高くなる。

木の年輪を密にするには、植林時に植え付ける苗木の本数を多くして、ある程度混んだ状態で木を育てるのが有効だ。あるいは、適切に枝打ちをして成長をコントロールする手法もある。枝打ちはもちろん節のない、あるいは節が小さく、少ない木を育てるための技術だが、枝が少なくなる、つまり葉っぱが少なくなれば光合成による成長の度合いも抑えられるので、年輪を密にすることができるわけだ。

だが、苗木の本数を多くすればそれだけ苗木代がかかるし、その後の手入れも大変である。枝打ちも当然人件費がかかる。つまり、強度が安定して高くなる木を育てようとすれば、手間もコストもそれなりにかけなければならない。

ところが、そうした林業サイドの努力はほとんど評価されていない。以前、あるセミナーでパネラーを務めていた工務店の社長が「木を育てたり、製材したりするのにはあまりコストをかけないでいいから、品質の安定した木をできるだけ安価に供給してほしい」と発言するのを聞き、脱力感に捉われたことがある。その時は上記のような事情を話し、納得してもらったが、こうした感覚で木を見ている作り手は案外多いのではないか。


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