地方の日常も都会人には非日常 事を起こし、アドバルーンを上げれば人が集まる
日本旅行おもしろ旅企画ヒラタ屋代表 平田進也 氏
巧みな話術とユニークな演出で関西を中心に絶大な人気を誇る‶浪速のカリスマ添乗員〟平田信也氏。豊富な添乗経験を持つ平田氏に、全国各地の地方創生の取り組み事例や、地方における交流人口、定住人口拡大へのヒントを語ってもらった。
──添乗で全国各地を回られた経験から、地方創生の成功事例を教えてください。
一つは兵庫県多可町。自然がたくさんあり、キツネやタヌキが徘徊するようなところ(笑)。交通も鉄道がなく、大阪から車で2時間少しかかる。酒米で有名な山田錦発祥の地で、おいしいお酒が造れる。また、西日本一というラベンダー園「ラベンダーパーク多可」が2008年にオープンし、ラベンダー摘みの体験ができ、お客さんから人気を集めています。ただ、ほかにはこれといった産業がないようでした。
私がツアーを催行する際、大事にするのが食事で、「地元で『これ』というものをお客さまにお出しできますか」と言うと、紹介されたのが「天船巻きずし」でした。地元の婦人団体が事業を興し、「マイスター工房八千代」というお店を作り、「私たちでもできる家庭料理を」と、作り始めたものです。普通の巻きずしと違い、かなり太い。半分に切ったキュウリや、だし巻き卵、どんこシイタケ、かんぴょうなどが入っていて、ご飯は少しですが、その巻き加減が絶妙。ふわっとした食べ心地で非常においしい。
これも一つの観光の要素だと思い、ラベンダー園とともに、この巻きずしを現地で食べたり、買ったりできるツアーを仕立てたら、お客さんの満足度がすごく高かった。私のお客さまは料亭でぜいたくなものを食べているような人も多いのですが、昔の時代に戻ったようだと非常に喜ばれました。
巻きずしはヒット商品になり、節分などは1万8千本売れるそうです。売り上げにして1440万円。普通の日でも1500から2千本売れるといいます。大阪や京都から車で買いに来て、店の前が数珠つなぎになるほど。大阪などで催事をすると10分で完売になる。
「何もないまちでもこうしてお客さんを呼ぶことができました。私たちの何気ない日常も、都会の人たちにとっては非日常なのだということがよく分かりました」と、現地の人は言います。まさに、これがまちおこしで、考え方次第でどこでもできると思います。
「うちのまちには何もない」と嘆くことはありません。私のようなよそ者に見てもらうことがまず、大事だと思います。
──地方で「わがまちには何もない」と言われることが確かに多いですね。
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