2022.7.11

熱中症が過去最多に

続く猛暑に熱中症で搬送される人が過去最多に(写真はイメージ)

6月27日、九州南部、東海、関東甲信越で梅雨明けとなった。いずれも平年より2週間以上早いという。そして、それに先立つ24日以降、全国で猛暑日が続いている。消防庁によると、6月20~26日の一週間に熱中症で救急搬送された人は全国で4551人にのぼり、統計を取り始めた2010年以降で過去最多となった。もはや災害といってもいい。

5日連続の猛暑日となった29日、首都圏では熱中症により5人の死亡者が出ている。熱中症警戒アラートが発出され、運動の原則中止、外出を避けてエアコンなどを使って過ごすよう呼びかけが行われた。

その一方で、国はエネルギー危機のなか夏の電力需要増加を見越して節電を強く呼びかけていた。そこに一足も二足も早い梅雨明けの猛暑である。事業者や家庭に強く節電が求められているが、わかりやすく伝えるための例示として、照明やテレビなどとあわせて「エアコン」があげられている。

「節電要請のなか熱中症対策でエアコンを使っていいのか」と戸惑う声が上がっているという。いや、そのくらい自分で状況を踏まえて判断しようよという声も出ているらしいが、決して的確に判断できる人ばかりではない。特に高齢者だ。

暑さ・寒さの認知力が弱まっている人がいる。また、エアコンをつけることさえためらうほど生活費を切り詰めている人もいる。先の首都圏で熱中症で亡くなった人は、60代、70代、90代が一人ずつ、80代が二人である。

早く梅雨明けした年は猛暑が続くという。電力需給のひっ迫も続くだろう。もしも長期化した場合、その場その場の節電要請には遠からず限界が来るはずだ。コロナ禍で半強制的に社会が変わらざるを得なかったように、暮らし方や住まいの在り方を抜本的に見直す時期に来ているのだろう。それは単にドライヤーや炊飯器といった家電の節電を求める掛け声レベルではないはずだ。場合によっては、人の生死につながる。

スマートウェルネス住宅等推進調査事業や(一社)健康・省エネ住宅を推進する国民会議の活動などの取り組みが進み、住宅の温熱環境が人の健康を大きく左右することのエビデンスが積みあがってきている。

しかし、そうした知見の実際の住まいへのフィードバックは進んでいるだろうか。新築住宅はともかく、既存住宅における対応を期待したい。さらに住まいの温熱環境というと、まず冬の温度差によるヒートショックが指摘されるが、暑熱環境も忘れてはいけない重要な要素である。その視点からの温熱環境、湿度環境、通風・換気などがもっと語られていいのではないだろうか。