[専門紙誌4社共同企画]神山町(徳島県):創生戦略で3000人の人口維持へ
過去最高の転入者数を記録するなど成果着実に
「消滅可能性都市」の危機を乗り越え、2060年以降も3000人を下回らない人口を維持しようと、さまざまな取り組みを進める徳島県神山町(かみやまちょう)。2019年度に転入者数が転出者数を上回る8年ぶりの社会増。翌2020年度は過去最高の転入者数を記録するなど、その取り組みは着実に成果を上げている。
神山町は徳島県のほぼ中央。県庁所在地の徳島市内から車でおよそ1時間の自然豊かな町だ。面積は173.
30㎢と、山手線の内側のおよそ3倍。ここに2417世帯、4941人の人々が暮らす(3月1日現在)。
町の中央を横断するように吉野川の支流、鮎喰川(あくいがわ)が流れ、この河川に沿って集落と農地が点在する。その周囲は町の面積の86%を占める標高300~1500m級の山々で、戦後に植林された杉、ヒノキが茂る。町の木にも指定される杉は「神山杉」と呼ばれ、良質な建材と評価が高い。
年間観光客数はコロナ禍前の2019年が94万4502人、直近の2021年が80万3171人。例年最もにぎわうのは3月下旬から4月上旬にかけての桜の開花シーズンだ。町には四国八十八箇所巡りの12番札所、焼山寺があり、札所巡りのお遍路さんが訪れる。町内には江戸時代の慶応4年(1868年)に地域の人々のために開業した湯屋をルーツとする「神山温泉」もあり、温泉施設にホテルが隣接、日帰り利用の町内や県内住民ほか、花見や遍路、観光、視察で訪れた県外客も多く利用している。
消滅可能性都市ランクでワースト20位に
神山町は2015年、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」と題した町の創生戦略を発表した。2016年度から2020年度までの第1期を終え、現在は2021年度から2025年度までの第2期に着手している。
プロジェクト策定のきっかけの一つは日本創成会議が2013年に発表した「消滅可能性都市全国ランキング」だ。若年女性人口(20~39歳)の2040年推計値を2010年の数字と比較したところ、減少率が大きい自治体のランキングで、神山町は全国およそ1700市区町村の中でワースト20位にランクされた。「このまま放っておいては町が消滅してしまう」。危機感を抱いた町は、国の「まち・ひと・しごと創生法」の施行も機に、独自の戦略を策定することになる。
目標とするのは2060年以降も3000人を下回らない人口を維持すること。かつ、小中学校の各学級人数を20人以上にすることだ。人口減少の流れには逆らえないが、将来にわたり一定数の人口を維持することを目指す。そのためには、人口構成の中身を変える必要がある。子どもを産み、育てる若者世代に住んでもらわなければならない。総人口とともに小中学校の学級人数も目標に置いたのはそのためだ。
成果を上げた一つが「大埜地(おのじ)の集合住宅プロジェクト」だ。閉鎖された中学校の寄宿舎跡を再開発。入居対象を「高校生以下の子どもと同居している世帯」、「40歳未満の単身者」など、若い人たちに限定した住宅を造った。
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