仮想空間と住まい
玉川大学 ソフトウェアサイエンス学科 ビジュアルインターフェース研究室 教授 塩澤秀和氏
昨今、メタバースというキーワードで注目を集める仮想空間。まるで現実世界にいるかのように人々を錯覚させるもう1つの世界は、新たな市場としてどのような可能性を秘めるのか。また、現実社会や人々の暮らしをどのように変えるのか。玉川大学 ソフトウェアサイエンス学科 ビジュアルインターフェース研究室 塩澤秀和教授に話を聞いた。
玉川大学 ソフトウェアサイエンス学科 ビジュアルインターフェース研究室 教授
塩澤秀和 氏
2000年慶應義塾大学大学院理工学研究科計測工学専攻博士課程修了。
博士(工学)。東京電機大学助手を経て現職。
日本バーチャルリアリティ学会・サイバースペースと仮想都市研究委員会副委員長、同学会香り・味と生体情報研究委員会幹事、情報処理学会グループウェアとネットワークサービス研究会幹事。
専門は、情報可視化、VR/AR応用、グループウェア。
現実世界とは異なるもう1つの世界 技術革新で注目される仮想空間
──日進月歩で進化する仮想空間に関する研究が今、どのような状況にあるのか教えてください。
私は、ゴーグル型のディスプレイを用いる「VR(仮想現実)」や、コンピューターの情報を現実に重ね合わせて表示する「AR(拡張現実感)」の技術によって、地図上などに統計データなどのグラフィックスを表示させる「ビジュアルインターフェース」という分野を研究しています。
実はVR(バーチャルリアリティ)の専門家は、「仮想」という言葉を好みません。「バーチャル」という言葉の本来の意味からすると、現実に近い“仮に想像した世界”というよりも、現実世界の本質を実現した“もう1つの世界”と言えるからです。VR技術が発展すれば、まるで本当にその世界にいるかのような体験ができるようになるでしょう。例えば、月面に降り立つことや平安京の街歩きも体験できるのです。
一方、拡張現実とも呼ばれる「AR」は、「VR」がコンピューターによって100%の仮想世界を作り出すのに対し、現実世界を主体に置き、そこに仮想的なオブジェクトを反映させる技術です。これらの技術を組み合わせることで、現実世界の室内から窓の外を見ると、バーチャルな世界が広がっているなど、現実世界と仮想世界の境目が曖昧な世界を作り出すことができます。この2つの技術を調整することは複合現実感(MR)と呼ばれ、現実と仮想のバランスを取ることで、様々な用途への活用が期待できます。
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