林業苦境の最大要因は製材需要の低迷 工務店などと連携 適材適所の利用を促進
(一社)日本林業経営者協会 青年部会長 内山総太郎 氏
林業と住まい【後編】
(一社)日本林業経営者協会 青年部会長
内山 総太郎氏
1978年群馬県生まれ。2001年熊本工業大学工学部卒業、卒業後は大分県のトライウッド等で林業の実践的な経験を積み、2004年から実家の内山林業に戻り林業経営に従事。日本林業経営者協会の青年部会で活動し、2019年から会長に就任。
ウッドショックの影響もあり、これまで以上に国産材への注目度が増してきている。一方で、近年、日本では、立木価格低迷により、山側に適正な利益が還らず、木を伐って、植えて、育てるという、山の循環利用が困難になってきている。林業経営の安定化に向け、政策提言をまとめた(一社)日本林業経営者協会の青年部会長の内山総太郎氏に林業経営の現状、今後の展望について聞いた。
──林業経営の安定化に向け、どのような取り組みを進めていくべきとしているのでしょうか。
低迷する山元立木価格を、一つの目安として1995年の1㎥あたり約1万円の水準にまで引き上げていくことが目指すべきところであるとの共通認識を持ち、提言をまとめています。そして山元立木価格が低迷し、林業経営を苦境に陥らせている最大の要因は、無垢製材品向けのA材の需要が減っていることだと考えています。
仮にA材の需要が堅調な中で、集成材や合板、CLTなどの材料になるB材、バイオマス燃料として用いるチップ用のC材の需要が増加するのであれば、木材の底値が決まり、丸太価格、及び山元立木価格の上昇につながります。
しかし、昨今のようにA材の需要が縮小している中で、B材、C材の需要が拡大すると、「A材、B材の区別もなく、丸太を加工し、ラミナの状態にして接着し集成材として使用する」、あるいは、「建築材料として使用できるにもかかわらず、チップにする」ということが増えます。結果的にA材の供給量も増えますが、価格が下落し、木材価格全体が低下するという現象が起こっています。
現在主流となっている住宅づくりにおいて、無垢材や高品質の木材が使われなくなっていることは事実です。(一社)日本木造住宅産業協会の「国産材利用の実態調査」によると、2013年の結果では、柱に利用された部材は、国産材製材品が12%、国産集成材が27%、輸入集成材が58%と輸入集成材が6割近くを占め、横架材に至っては、国産材製材品は3%しか使われていないという状況でした。
また、2018年の同調査では、管柱について国産材の利用率は、前回調査の37.2%から41.5%へと増加しているものの、ヒノキ製材は8.5%→4.8%、スギ製材は16.5%→10.9%へと減少している一方、国産材集成材は11.5%→25.9%と倍増しました。また、通し柱は、国産材集成材が4倍に増加しました。国産材利用が進んでいるのは、国産材集成材や国産材合板であり、無垢製材の利用は必ずしも増加していません。
ただし、この調査の対象は、大規模ハウスメーカーが中心です。一方で、国産材製材品の需要は、中小工務店などが牽引していることが分かっています。2015年度に、日本林業経営者協会青年部、JBN・全国工務店協会、日本木材青壮年連合会が共同で行った、中小工務店3000社を対象とした木材の利用実態調査では、柱に使用された部材はスギ・ヒノキ製材品が80%近くを占め、横架材でも国産材無垢材のシェアが30%を超えていました。
また、森林所有者、製材所、設計士などとの連携に取り組んでいる、あるいは取り組みたいという回答が9割を超えました。樹種選択に施主が介在するのは28%しかなく、プレカット工場や木材販売店など、木材調達先の影響が大きいこと、施主、設計者、施工者のいずれかが樹種の指定をしないと集成材に流れてしまう恐れがあることも明らかになりました。これまで多くの森林所有者は、自分たちが育てた木材がどのように加工利用されているのかについてあまり関心が高くありませんでした。しかし、こうした調査結果が示すのは、製材・加工・流通事業者、プレカット工場、工務店、設計士などと連携し、木の良さを伝える家づくりに積極的に関わっていくことが無垢材の需要拡大につながるということです。川中・川下の事業者との連携を進め、無垢材を適材適所に利用してもらえるように、サプライチェーンを再構築していくことが重要だと考えています。集成材を使用する家づくりがある一方で、「無垢材や高品質の木材の価値を適切に評価し、適材適所に使用していくことも考えてほしい」、「無垢材を使用する新しい木質材料の開発、普及などにより無垢材の使用量を増やしてほしい」ということが我々、林業経営者の切実な想いです。
──ウッドショックの影響で、国産材への注目度が高まっていますが、安定供給への不安があるという声を聞きます。
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