森林所有者の利益確保が前提

「ウッドショック」下の木材利用②

利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。

トータルの収支は完全に赤字

現在、国内の森林資源は人工林を中心に増え続けており、相当な供給余力があることは間違いない。今後も中国やヨーロッパなどで堅調な木材需要が見込まれる中では、木材輸入が増えるとは考えにくく、豊富な資源量を背景に、国産材へのシフトは進むと見ていい。

ただ、そのためには林業サイドの経営マインドを高める必要がある。

2000年前後には20%を下回っていた木材自給率は、その後、上昇基調に転じ、現在は40%近くにまで回復してきている(2019年実績は37.8%)。しかし、林業経営をめぐる状況は依然として厳しい。

林野庁の調査によると、スギ人工林の場合、苗木を植え付けてから50年生にまで育てる経費は、1㏊当たり114万円〜245万円かかる。それに対して、50年生のスギを伐採して販売した場合の平均的な収入は96万円というから、完全に赤字である。つまり、森林所有者の立場で言えば、このままで生産量が増えたとしても赤字が拡大するばかりで、うまみはない。

それでも国産材が生産され、しかも近年は生産量が増加傾向になっているのは、過去にかかった経費は勘定せず、丸太の代金と伐採搬出経費とを突き合わすだけで収支が論じられるケースが多いことが背景にある。


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