ウッドショックが突き付ける課題

住宅業界変革の契機にできるか?

住宅業界を襲うウッドショック。コロナ禍に端を発し、国内外の木材の需給バランスが崩れ、外材が高騰、不足する状況が続いている。大手製材メーカー、大手プレカット工場は、「値上がりは続く見込みだが、木材自体は入ってきている」と直近の状況を話す。「住宅が建てられなくなる」とも言われた最悪の状況は脱しつつあるようだが、「当分、ウッドショック以前の水準にまで外材の価格が戻ることはない」という見方が大半を占めている。ウッドショックは、どのような課題を住宅業界に突き付けているのだろうか。

過去のウッドショックとは違う
需要、供給、物流が複合要因に

新型コロナ感染拡大により、世界的な木材需給が変化し、また、海外からのサプライチェーンが大きな影響を受け、外材が高騰、不足する状況が続いている。震源となったのは、米国の住宅市場だ。米国の住宅着工は十数年ぶりの高水準にあり、新築以上に中古住宅の販売も好調で、さらに、コロナ禍の巣ごもりに起因するDIY需要などが増大している。米国の住宅着工戸数(戸建て計)は、2020年6月から急激に増加し、12月には、年率換算で半年前の約1.8倍に相当する166万戸を突破した。

製材・集成材の輸入量

また、中国の旺盛な木材需要も影響している。世界各地から木材を買い集め、過去10年で、中国の丸太輸入量は1.8倍の4500万㎥にまで拡大。中国における木材需要は、住宅向けではなく、工業製品の輸送に使用する梱包用パレットなど、産業向けが主で、いち早くコロナ禍から脱し経済が回復し、木材を買い集める動きに拍車がかかっている。

さらに、2020年末から、米国での輸入急増とコロナ禍に伴う港湾処理能力の低下などにより、北米にコンテナが滞留し、アジアでコンテナが不足。海上輸送運賃が急激に値上がりし、2021年4月時点でも依然として高水準にある。

こうした中で、外材の価格はかつてない水準まで高騰し、「そもそも木材を調達できない」という状況が表面化。「ウッドショック」と言われる事態にまで深刻化し、住宅業界にさまざまな影響をもたらしている。

これまでも、環境問題などを背景に、木材の輸出国が森林伐採を禁止するなど規制を強化し、木材供給が滞り、ウッドショックと呼ばれる事態は発生した。第1次ウッドショックは、北米西海の環境問題により、天然林の伐採禁止で産地価格が高騰したことにより1990年代に発生。2006年の第2次ウッドショックは、インドネシアの森林伐採制限で丸太価格が高騰したことが引き金となった。

元鹿児島大学教授で、NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長の遠藤日雄氏は、「過去の2度のウッドショックに共通しているのはいずれも供給側の問題であったが、現在のウッドショックは、複合的な要因が重なり発生している。米国・中国における需要拡大、世界的なDIY需要の高まりといった『需要』の問題、工場稼働率低下による製材品不足、北米西海岸の森林火災、コロナ需要減を見越した出材減といった『供給』の問題に加えて、コンテナ不足、スエズ運河座礁といった『物流』の問題も含めた複合的な問題が重なり合っている」と指摘する。

製材、集成材など輸入が減少
価格の大幅引き上げもやむを得ず

ウッドショックにより、具体的にどのような木材の輸入が滞っているのか。林業・木材産業関係者は、「日本の木材自給率は38%で、6割以上を外材に頼っている。特に近年、製品として入ってくる輸入材が増えてきたが、ウッドショックにより、この製品として入ってくる輸入材が、中には半減し、あるいは大手メーカーが日本から撤退といったことが起こっていて、トータルでの需要を満たせていない状況になっている」と説明する。


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