子育てを中心とする同心円状の都市が必要 新型コロナ感染の制御はバランスが大切

千葉大学デザイン・リサーチ・インスティテュート教授 下村義弘 氏

人類と住まい【後編】

専門分野は生理人類学、人間工学。身体の仕組みや現場での使い方の視点を持ち、様々なデザインを研究開発している。2008、09、11年度グッドデザイン賞、12年度人間工学グッドプラクティス賞特別賞、14年度日本生理人類学会論文賞、16年度日本生理人類学会奨励賞など多数受賞する。

──コロナ禍で感染防御が注目されています。

マスクやフェイスシールドを例にしても、呼吸のしにくさ、頭痛などの問題があり、人間工学の視点ではまだまだ介入する余地があります。感染を効果的に制御するためには、人間工学をもっと取り入れれば良いと思いますが、一方で気になる点もあります。

ウイルスや病原体は目に見えません。私たちは、生活空間では知識や行動の仕方で戦うしかないわけですが、感染を気にするあまり子どものころから防御しすぎてしまうと、免疫機能が育ちにくくなるとも言われています。馬と一緒に暮らしていた時代もあります。

人間は、もともと外で暮らしており、ある程度汚い環境下でも生きることができるよう、免疫機能が長い年月を経て備わってきました。あまり防御を厳格にしてしまうと、本来備わっている体内の免疫機能を発揮しにくくなります。ここが新型コロナウイルスの難しい所なのですが、例えば、外で、泥んこまみれで遊んで、家には外からのウイルスや病原体を持ち込まないために、手洗いや除菌をしっかりするという具合に、健康維持と感染防御のバランスがとても大切になります。

──短期的にはよくても、生理人類学として見ればプラスとは言えないことがコロナ禍であぶり出されていますね。

そうです。コロナ禍で運動する機会も少なくなりました。もともと人間は外敵が来るのを見張ったり食料を得たりするため、日中のほとんどで立って活動をしていました。在宅ワークなどで日中のほとんどで座っていると、腰や循環器によくないですし、安静のためあまり疲れないので、逆に夜はすっきり体を休めることができません。オフィスワークが多い企業では、オフィスに来た時に体を動かしてもらうよう、スタンディングチェアなどを配置しているところもあります。住宅でも、座りっぱなしではなく、住まい手自らが体を動かすような仕掛けが必要ではないでしょうか。


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