睡眠健康に新たな指標“睡眠休養感” 睡眠で健康寿命が延びる?
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 栗山健一部長

部長 栗山 健一氏
人生の3分の1を占める睡眠。睡眠に関心のない人はいないのでは、と思うほど今や睡眠に関する情報があふれ、快眠のための寝具やデバイスなどスリープテック市場も活況と聞く。そもそも睡眠について正しい知識をもっているのだろうか?我が国の睡眠研究の最前線である国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一部長に、よい睡眠とはなにか、その環境づくりについても話を聞いた。
──なぜ人は眠くなるのでしょうか
端的に言えば人は寝ないと死んでしまうからです。これは動物実験でも明らかで、ほとんどの動物は10日間眠らせないと死んでしまいます。慢性的に睡眠不足が続くと、生活習慣病をはじめとした様々な疾患にかかるリスクが増し、寿命が短くなります。
人は日中活動している間に、様々なダメージを体にあたえていますが、眠っている間に、こうしたダメージの補修や疲れを癒す恒常性維持機能(ホメオスタシス)が働きます。
最も重要なのは脳におけるホメオスタシスです。脳は起きている間、比較的高い温度を保つことで脳活動を維持しています。睡眠には、この脳温を下げる役割があり、夜間脳温を下げることで脳のホメオスタシスを守っています。人は体温が下がることで眠くなります。普段、朝7時に起きて夜12時頃に寝る人なら、朝の5時半ぐらいから体温が少しずつ上がり始め、目覚める準備をはじめます。日中は一定の体温を保ちながら徐々に体温が高まり、夜8時〜11時の時間帯に最も体温が高くなります。そこから速やかに体温が下がるのと同期して眠気が出現します。
こうした規則的なパターンを毎日つくる脳のメカニズムとして体内時計があります。体内時計の指令によって、24時間の周期で体温の上がり下がりをコントロールしているのです。体内時計が昼夜を感知するための最も強力な情報源は光です。朝起きて最初に入る太陽の強い光を感知し、体温を下げ始めるタイミングを約14時間後に設定するため、普段寝床に入るちょっと前から眠りに入るための体の準備が始まるのです。
──良い眠りを得るにはどうすればよいのでしょうか
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