2050年のカーボンニュートラルへ いち早い省エネ基準の適合義務化を

住宅・建築物の省エネ対策への提言

内閣府が開催した第5回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースにおいて、「住宅・建築物のエネルギー性能の向上に関する提言」が公表され、省エネ基準の適合義務化の必要性が指摘された。同タスクフォースのメンバーでもある(公財)自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長と、同財団でシニアマネージャーを務め、東京都の環境政策などに携わった経験をもつ西田裕子氏に話を聞いた。

公益財団法人 自然エネルギー財団 事業局長
大林ミカ 氏

2011年、自然エネルギー財団の設立に参加以来、現職。財団設立前は、アラブ首長国連邦の首都アブダビに本部を置く「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」で、アジア太平洋地域の政策・プロジェクトマネージャーを務めていた。1992年から1999年末まで原子力資料情報室でエネルギーやアジアの原子力を担当、2000年に環境エネルギー政策研究所の設立に参加し、2000年から2008年まで副所長。2008年から2009年までは駐日英国大使館にて気候変動政策アドバイザーを務めた。

公益財団法人 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(気候変動)
西田裕子 氏

2017年より現職。専門は、都市再開発や再開発についての調査研究、都市のサスティナブルデベロップメント(環境建築/都市づくり)関連の政策。2017年まで、東京都において気候変動、ヒートアイランド対策の政策立案および国際環境協力を担当。世界の大都市ネットワークであるC40と連携して、都市の建築の省エネルギー施策集「Urban Efficiency」を取りまとめるなど、世界の都市をサポートする活動をしてきた。

──現在の住宅・建築物の省エネに関する状況についてどうお考えですか。

大林 タスクフォースの提言でも言及していますが、2050年にカーボンニュートラル社会を実現するためには、自然エネルギーと省エネルギーを両輪として対策を進めていく必要があります。そのため、自然エネルギーを主題としているタスクフォースで、住宅・建築物の省エネ対策について議論する機会が設けられました。

正直、前回、省エネ基準の適合義務化が見送られたことに驚いています。現行の省エネ基準については、諸外国と比較しても決して高いレベルではありません。その基準さえ義務化できないとなると、諸外国から大きく遅れをとっていると言わざるを得ない。

スピードもレベルも、2050年のカーボンニュートラル社会の実現という目標に追いついていません。今、新築される住宅は2050年も存在しているでしょう。そのなかに1999年レベルの基準さえ満たしていないものが含まれているわけです。そのような状況でカーボンニュートラル社会を実現できるのでしょうか。

西田 東京都で環境政策に携わるなかで、住宅・建築物の省エネ基準の適合義務化は温暖化対策を進めるうえで不可欠であるという想いがありました。

義務付けのレベル感については、確かに現行の基準では不足している感はありますが、まずは現行基準でも良いので義務化をすることが第一ステップになるのではないでしょうか。

大林さんの話にもあったように、義務化が遅れるほど、より多くの省エネ基準を満たしてない住宅が2050年に残ってしまうのです。1年でも遅れてしまうことが本当に惜しい。スピード感を持って議論を進めていくべきです。

とは言っても、住宅業界や自治体の準備期間は必要でしょう。準備期間に2年間が必要と考えると、今年中に法改正に踏み切っても、実際に義務化されるのは2023年になります。

今回の説明義務化を進めるために、国土交通省の方でも一次エネルギーの簡易計算方法を策定するなど準備を進めてきました。そのため、義務化に踏み切りやすい環境は整ってきているのではないでしょうか。

確かに自治体の作業負担の増加や対応できない住宅事業者への配慮なども必要かもしれませんが、まずは義務化に踏み切らないと何も動き出さないと考えています。

──タスクフォースの提言に対する反響はどうでしたか。


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