コロナ後もテレワークは定着する 個人に合わせて働く場の構築を
(一社)日本テレワーク協会 専務理事 田宮一夫 氏
コロナ禍で半強制的ではあるが、テレワークが一気に普及し、私たちの暮らしに大きな影響を与えた。第1回目の緊急事態宣言の発出から1年を迎え、テレワークの現状はどうなのか、(一社)日本テレワーク協会の田宮一夫専務理事に聞いた。
──緊急事態宣言の発出をきっかけにテレワークが一気に普及しました。4月7日で、昨年の第一回目の緊急事態宣言の発出から1年が経ちましたが、テレワークの実施率などはどのような状況ですか?
テレワークの実施率は、昨年の第一回の緊急事態宣言の時期に大きく伸び、今はその頃よりは若干減少してはいますが、コロナ禍前に比べれば高い水準を維持していると言えるでしょう。
テレワークの実施率についての調査は民間や自治体、国などによる様々なものがありますが、調査対象や母数、質問の仕方、調査時期などによって、数字が異なります。
例えば、東京商工会議所が昨年9月〜10月に会員企業1万3580社(回答数1048社)を対象に行った調査では実施率は53.1%、東京都が今年3月に都内企業(従業員30人以上)446人に行った調査では実施率は59%と半数以上になっていますが、国土交通省が今年3月に発表した、全国の就業者(有効サンプル数4万人)に対して行った「テレワーク人口実態調査」では19.7%と、東京商工会議所や東京都の調査よりも低く出ています。
これは、国土交通省の調査では、母数が4万人と多いことや、調査対象がテレワーク制度のある企業の雇用型就業者に限定されていること、東京都よりも実施率が低い地方も含めて聞いているためです。
いずれにせよ、国土交通省の調査でも実施者の割合は昨年度から倍増しており、コロナ禍でテレワークが一気に普及したことがわかります。
一方で、もともとテレワークの必要性が大きく叫ばれるようになったのは、東日本大震災がきっかけでした。企業が災害時でも事業を継続していくBCP対策として、テレワークの必要性が訴えられました。
さらにその後、安倍政権で普及の機運が拡大しました。働き方改革の推進に加え、労働人口の確保に向けて1億総活躍社会の実現が唱えられ、在宅でもワーキングマザーや高齢者などが仕事をしやすくするための手段として注目。さらに、2020年の東京五輪・パラリンピック期間中に首都圏で交通の混雑が予想されることから、交通混雑の解消につながるよう、大手民間企業を中心にテレワーク制度導入に機運が高まっていました。
こうした中で、昨年の緊急事態宣言です。これまで取り組んできた企業以外も、半強制的にテレワークを実施したことで、一気に広がったというわけです。
──先の国土交通省の「テレワーク人口実態調査」では、実施者の約6割がテレワークに満足しており、約8割がテレワークの継続意向があると回答しています。それにもかかわらず、緊急事態宣言の解除後はテレワークを取りやめ、出社に切り替える企業もあります。
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