住宅会社の最長60年保証の取り組みを裏側から支えていきたい
一般社団法人MEAS代表理事 田中俊行 氏
品確法で住宅会社には引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことが定められているが、地域密着を掲げる住宅会社の中には、より長期の保証を行いたいというところも多い。こうした工務店がより負担なく長期保証に取り組めるよう、(一社)MEASの田中俊行代表理事は、黒子としてバックアップしたいと話す。
──まず、(一社)MEASで提供しているサービスについて教えてください。
私たちは地域の工務店を中心とした住宅会社向けに、住宅の長期保証の取り組みをバックアップするサービス「スマイノミライ」を2016年から提供しています。
住宅会社が品確法で定められている引渡しから10年間の瑕疵担保責任よりも長期の保証を行う際に、高額な補修費用の負担が必要になったり、万が一、廃業や倒産して保証を提供できなくなるといった不測の事態に陥ったりする可能性があります。そのような場合でも施主が保証を受けられるサービスが「スマイノミライ」です。「スマイノミライ」は引き渡しから20年を基本とし、現在は最長60年まで提供することが可能です。
また、昨年からは、これに加えて、引き渡しから10年間の住宅設備保証「セツビノミライ」も開始しています。
──「スマイノミライ」については、どういった経緯でサービスを提供されたのでしょうか。
住宅会社の経営者の皆さまから大手ハウスメーカーと同じように長期保証をしたいという声を受け、私の実家が和歌山県の中小工務店ということもあり、皆さまがこれからも地域で末永く家づくりに携わっていただくためのサポートができるならと、強く思ったことがきっかけでした。
地域密着を掲げる住宅会社の中には、住宅に不具合があった際に、施主の要望に応じて無償で対応しているところが非常に多くあります。
たしかに、地域に密着し、引き渡し後も長きにわたって施主のサポートをすることは素晴らしいことです。しかし、無償での対応は住宅会社に収益をもたらさず、時間とコストばかり増してしまうことになります。結果、地域密着のどんなに素晴らしい理念を掲げた優良な住宅会社でも、疲弊してしまいます。
施主が工務店選びのポイントとして「長く付き合ってくれること」を重要視する時代だからこそ、いかに将来のアフターサービスで疲弊しないようにするかは長く安定的な経営を続けていく上で極めて重要な要素です。
そのためには、施工不良の責任は住宅会社がしっかりともち、維持管理や経年劣化による不具合の補修の責任は住宅購入者がもつというかたちで責任を明確に分ける必要があり、そうすることで本来のあるべき姿、工務店と施主との良い関係を長く保つことができると考えています。
一方で、長期保証は住宅会社と施主との間の契約であり、保証ができなければ債務不履行となってしまいますので、高額な補修費用の負担が住宅会社の財務面に大きな影響を与える可能性があります。どれだけ検査を徹底しても、施工不良を無くすことは不可能です。どれだけ長期保証が素晴らしい取り組みであったとしても、たった一度の高額な補修が原因で優良な住宅会社を失ってしまっては意味がありません。
地域密着を掲げる優良な住宅会社が、安心して長期保証を提供できる体制を築けないか──。こうした想いから、(一社)MEASを設立し、長期保証を裏側から支える保証サービス「スマイノミライ」の提供を開始しました。
──資力に問題がなければ長期保証をする上で「スマイノミライ」を採用する必要はないのでしょうか。その他に採用するメリットがあれば教えてください。
私たち第三者の目が入ることで、住宅会社単独の長期保証では難しい「不具合が起きたときに本当に保証してもらえるのだろうか」「施工不良を認めてくれるのだろうか」という施主の不安の解消に加え、実際に不具合が発生した際の住宅会社と施主との緩衝材の役割を果たします。
今は、施工不良やその対応に問題があればSNSですぐに拡散されてしまう時代ですから、不具合が起きてしまっても施主に納得をしていただき、良好な関係を続けるために、第三者である私たちの役割は非常に重要になってきていると考えています。
もちろん、スマイノミライをご利用いただかなくとも大手ハウスメーカーと同じように長期保証をしていただくことは可能です。私たちの使命は、この保証事業をしっかりと運営していくことが大前提ではありますが、「スマイノミライを売ること」ではなく、住宅業界そして住宅会社と施主の関係を今以上に良くする可能性のある「長期保証を普及していくこと」ですので、ぜひ多くの地域密着の優良な住宅会社に取り組んでいただきたいです。
──「スマイノミライ」は、地域密着で施主と長く付き合っていくために長期保証を提供したいと考える住宅会社に対して、大きな安心を与えそうですね。一方で、長期保証は施主との長期的な接点をつくれることから、紹介案件の獲得やリフォーム受注につながることを狙って、長期保証を導入する住宅会社も増えています。
たしかに、そのような表面的な効果だけを期待して、長期保証を導入する住宅会社もおられますし否定はしませんが、私は長期保証を集客のための営業ツールだとは考えていません。
地域に根ざす住宅会社として、引き渡し後も施主と長く付き合いたいという想いや、施工品質に責任をもつという覚悟として長期保証を導入するという理念が重要なのではないかと思います。
初めにこうした理念があるからこそ、住宅会社と施主の間で深い関係性が生まれ、その結果として、長期保証を通じて紹介案件の獲得やリフォーム受注などにつながるのではないでしょうか。
だからこそ、私たちは、長期保証に真摯に取り組んでもらえる住宅会社に「スマイノミライ」を採用していただきたいと考えています。そして、皆さまが安心して長期保証を提供できるよう導入から運用だけでなくお手伝いできることは何でも全力でサポートさせていただきます。
──今後の展望を教えてください。
現在「スマイノミライ」の最長期間である「60年」は、サービス提供開始前から大手ハウスメーカーでスタンダードになっていた最長60年保証に対抗していただくために設けた期間です。60年を超える長期保証のニーズは今のところ多くありませんが、すでに60年を超える長期保証を提供している住宅会社も出てきていますので、お取引先の皆さまの声をしっかりと聞いて対応していく必要があります。
ただ、私は保証期間の20年、35年、60年、100年といった数字ではなく、どのような想いで長期保証に取り組んでいただけるかの方が大切だと思いますし、そうでなければならないと思っています。保証期間の単なる数字競争が蔓延しないように見極めをすることも私たちの役目であると考えています。
また、消費者の長期保証への関心は高まっていますが、まだこれからの部分もあります。
長期保証を提供している住宅会社が消費者からこれまで以上に、そして正しく評価されるよう、例えば、動画などで消費者向けに長期保証をしている地域密着の住宅会社の想いや価値を伝える取り組みにも力を入れたいですね。
一般社団法人 MEAS
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