2021.3.12

セレンディクスパートナーズ、21年中に日本初の3Dプリンター住宅の実現へ

24時間、300万円で建築

セレンディクスパートナーズは、2021年中に日本で初となる3Dプリンターによる住宅の建築を目指す。
24時間、300万円で建築可能とし、これまでにない新たな住宅づくりを実現させたい考えだ。


住宅ローンに縛られない暮らしを提案
車のように買い替えも可能に

海外では3Dプリンターによる住宅づくりも始まっている

3DCADの設計データをもとに、スライスされた2次元の層を1枚ずつ積み重ねていくことで、立体モデルを製作する3Dプリンター。海外では住宅の建築に活用される事例も出てきているが、日本でもいよいよ実現に向けて取り組む動きが出てきた。

スタートアップのセレンディクスパートナーズ(兵庫県西宮市・小間 裕康CEO)は、2021年中に日本で初となる3Dプリンターによる住宅「Sphere(スフィア)」の建築を目指す。3Dプリンターを活用することで人件費と物流コストを削減し、30坪で価格300万円以下の住宅の販売を実現したい考えだ。

導入予定の建築用3Dプリンター

「日本の住宅価格は高く、住宅ローンに縛られる暮らしを強いられている人が多い。また、一度住宅を購入すると住み替えることは難しい。こうした実情に課題感を持っており、3Dプリンターの活用で割安な住宅を実現し、車と同じように、家もライフスタイルやライフステージに合わせて自由に買い替える暮らしを実現させたい」と、飯田国大COOは話す。

10㎡程度なら約7時間で建物が完成

セレンディクスパートナーズが実現を目指す3Dプリンター住宅「Sphere」の施工方法は次の通りだ。まず、米国から購入した建築用3Dプリンターを建築現場に運び、建物(壁・床・天井)を形作るための素材を3Dプリンターに投入。スイッチを入れると、10㎡程度の建物の場合約7時間で建物が完成する。その後、人の手で窓や内装の施工、電気・ガスなどのインフラ工事を行う。全ての工程を合わせても24時間以内に収める計画だ。

3Dプリンターはピックアップトラックで運べるコンパクトなタイプのものを採用し、建築場所が狭い道路に面していても運び込めるようにする。また、将来的には国内で機械メーカーと独自の住宅建築用3Dプリンターの開発も視野に入れている。

建物を形作るための素材については、化学メーカーと協業し、強度・耐火性・耐震性・断熱性・耐水性・遮音性を有する素材をベースにした多機能素材の開発を計画中だ。日本の住宅ではまだ使われていない新たな素材だという。

「Sphere」の最大の特徴は、建物の形状を、高い強度を実現する球体としていること。海外で建築されている箱型の3Dプリンター住宅は、3Dプリンターで出力したコンクリートに鉄骨などの構造体を入れることで、強度を確保している。しかし、構造体の施工には人の手が必要であり人件費が掛かる ̄ ̄。

そこで、「Sphere」では、建物の形を球体状とし、強度の優れた前述の新素材を使用することで、鉄骨などの構造材を使用しなくても十分な強度を実現する。「球体の建物形状は、風速120メートルと過酷な環境である火星への移住を目指したNASAのプロジェクトでも採用されており、物理的に最強の家の形状」と飯田国大COOは話す。「Sphere」の強度については、大手建設会社の協力を得て性能評価を行い、エビデンスを得る考えだ。

まずはプロトタイプからまちづくりも構想

「Sphere」のイメージ

セレンディクスパートナーズでは、2021年中に、建築確認申請手続きが不要な床面積10㎡未満のタイプ(9.9㎡)の「Sphere」を発売し、まずは、別荘需要などを開拓する。そして、2022年には、同法の対象となる30坪タイプも大臣認定を取得し、一般住宅市場へ向けて販売を目指す方針だ。

「これまでにない住宅なので、すぐに広く受け入れられるとは考えていない。まずは、床面積10㎡未満のタイプで、別荘やグランピングといった週末居住用途で世の中に3Dプリンター住宅のメリットや住み心地を知ってもらい、そのうえで、一般住宅に広く展開していきたい」(飯田国大COO)としている。

また、セレンディクスパートナーズは将来的に「Sphere」を導入したスマートシティも構想。現在、国は自治体と事業者が一体となって先端技術を導入した未来のまちづくり「スーパーシティ」を国家戦略特区で実現しようとしている。セレンディクスパートナーズは、こうした枠組みなども使いながら、最先端の住宅「Sphere」による街づくりを自治体に提案し、実現に向けて取り組みを進めていきたい考えだ。

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ハウジング・トリビューンVol.624(2021年14号)

特集:

巨大な潜在市場が動き出す

2015年のいわゆる「空家特措法」施行から6年が経過する。
国は大きく利活用と除却の二方面から、制度改正や補助事業などを通じて空き家対策を進めてきた。
発生の抑制や除去などに一定の効果が出ているが、利活用についてはなかなか火がつかなかった。
空き家問題には数多くの課題が横たわる。
今、こうしたその散在した課題を解決するサービスが続々投入されている。
さらに、コロナ禍は空き家市場にとってマーケット拡大のきっかけになる。
テレワークの普及により、多拠点居住や多拠点ワークを行う「場」として空き家に関心が高まっているからだ。
今年3月に閣議決定された住生活基本計画でも、空き家の活用を「新たな日常」に対応した新しい住まい方の実現の1つに挙げている。
また、6月18日に閣議決定された骨太の方針でも空き家について言及。
「先進的取組や活用・除却への推進等の支援」などをしながら、既存住宅(ストック)市場の活性化に結び付ける考え方を明確にした。
こうした空き家への関心の高まりを追い風に、いよいよ空き家マーケットの誕生の期待が高まる。
国が掲げる2030年に14兆円のストック市場の実現可能性が見えてきた。

目次

HTʼs eyes

土石流が人災であったとしても
大規模盛土造成地の点検スピードアップを

ストック市場のけん引役になるか
空き家ビジネス
巨大な潜在市場が動き出す

TOPIC&NEWS

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INTERVIEW

長谷川萬治商店/長谷萬 代表取締役 執行役員社長 長谷川泰治 氏
木が求められる時代に材木屋を再定義
感動を与えられる商品・サービスを充実

CLOSE UP

三井ホーム 中大規模木造マンションブランドを創設
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脱炭素化でギアチェンジ
加速する住宅省エネ化 動き出す断熱材市場

中央住宅 敷地とエネルギーをシェア 脱炭素社会を目指す暮らし価値を創造

リンナイ 入浴に新たな価値を! さらに上質なお風呂時間を実現

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林材ライター 赤堀 楠雄 氏

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