2021.1.28

どう選ぶ 住まいの屋根材 高性能化で広がる選択肢   

防災、耐久性、省施工など

災害対応で屋根リフォーム市場が拡大

屋根のリフォームは、コスト面の理由から塗装が圧倒的に多いが、10年ほどのスパンで塗装を繰り返す必要がある。こうした中で、金属屋根材メーカー各社は、金属屋根のカバー工法により、ランニングコストを抑えて屋根の長寿命化を実現するリフォーム提案を強化する。

屋根のリフォーム市場においても、災害対応が大きな関心事であり、市場拡大の推進力になっている。地震、台風被害が起き、屋根被害が発生するたびに、軽量であり、優れた耐風圧性能を備えた金属屋根のリフォームの特需が発生。瓦やスレート屋根からの葺き替え、あるいはカバー工法によるリフォームのニーズが過熱し、その後一旦落ち着くが、各社ともに、販売増の傾向が続いている。メーカー各社は、鋼板の高耐候化、遮熱性能のアップなど、保証地域の拡大、デザインバリエーションの拡充など、アップグレードにより他社と差別化を図る。

災害復旧で金属屋根が採用 軽量化、長期保証のニーズは継続

アイジー工業の「スーパーガルテクト」。災害復旧の需要で、カバー工法によるリフォームでの販売を伸ばす

アイジー工業の断熱材と一体化した横葺金属屋根、「スーパーガルテクト」の販売も好調に推移する。リフォームでの採用が圧倒的に多く、新築、リフォームの比率は1対9となっている。

同社は、2016年に金属屋根材、ガルテクトを一新し、超高耐久ガルバリウム鋼板を採用した「スーパーガルテクト」シリーズを発売。シリーズの全商品に対して、海岸線部における保証対象エリアを拡大し、穴あき25年、変褪色20年、赤さび20年の長期保証を付与した。

「スーパーガルテクト フッ素」には、塗膜の耐久性の高い「遮熱性フッ素樹脂塗装」を採用。遮熱性鋼板と、その鋼板に裏打ちした断熱材の相乗効果で、優れた断熱性能を発揮する。「スーパーガルテクト」には、特殊な「ちぢみ塗装」を採用することで、葺き上がりを一層引き立てる卓越した質感を付与した。

最大風速65m/sに耐える耐風性能を有していることもスーパーガルテクトが支持を集める理由の一つだ。屋根の模型に3分間強風を当てる実験を行い飛散しないことを確認している。

金属屋根材の2018年度の売上高は、台風災害の影響で特に西日本エリアでのリフォーム需要が喚起されたことを受けて前年度比48・9%増、2019年度も前年度比約14%増となった。

「建物への負担が少ない屋根の軽量化と、長期保証による安心が求められている。スーパーガルテクトシリーズで、屋根の安全・安心を高める提案を強化し、東京・大阪などの大都市圏のリフォーム需要を狙いたい」考えだ。

耐久性、意匠性向上で高付加価値化 豊富な金属屋根の選択肢で差別化

ニチハは、耐久性を大幅に高めた金属屋根材を展開。写真は高付加価値商品の「横暖ルーフα プレミアムS」

ニチハは、2016年、横葺金属屋根の鋼板の仕様を変更するなど、耐久性などを大幅に向上させ、リニューアルを図った。長期間にわたって外観を美しく保つフッ素塗装高耐食GLめっき鋼板を採用した「横暖ルーフα プレミアムS」、「横暖ルーフ プレミアムS」と、高い耐候性能、耐食性を発揮する塗装高耐食GLめっき鋼板を採用した「横暖ルーフα S」、「横暖ルーフ S」の4商品を展開する。海岸から500m以遠より保証対象となり、北海道含め全地域の施工を可能にしている。穴あき25年、赤サビ20年の保証を実現。抜群の耐久性能で長期間の安心を提供する。

「プレミアム」が付く商品がフッ素塗装を施したもの、「α」が付く商品が板張り調の形状で、最も厚い箇所で17mmと、より厚みを持たせ意匠性を高めたもので、用途やニーズに応じた豊富な選択肢を用意していることが同社の金属屋根材の強みとなっている。

1㎡あたりの重量は約5kgの超軽量設計で、建物の負担を軽減しつつ、断熱材を一体成型した三層構造により優れた断熱性能を実現。加えて遮熱鋼鈑を採用することで日射反射率40%以上の高い遮熱効果を発揮する。カバー工法により、特にスレート屋根材からのリフォームに最適だ。ビスでしっかりと、既存屋根材の下地材に留め付けるため、優れた耐風圧性能を有している。海岸地域に建つ13m以下の建物に採用という条件下で、「横暖ルーフα」(釘打ち)は、風速46m/sの風圧に耐え、飛散しないことを確認している。

さらに、雨水の流れる方向には、折り返し4重防水構造、横つなぎは防水リブを4重に配置する独自形状(特許庁長官奨励賞を受賞)を採用することで、優れた防水性能を持たせた。同社が実施した試験では、降水量230mm/h、風速30m/sの条件下でも漏水しない。

「もともと当社の金属屋根材は、リフォームでの採用が圧倒的に多いが、近年は、台風被害による屋根の復旧工事で需要は増加している。将来の台風被害にも耐える形でリフォームしたいという需要が多い。こうした傾向は今後も続く見通し」(金属外装営業部・森優司部長)。

超高耐候ガルバリウム鋼板採用の金属屋根 ストック改修で底堅い出荷

超高耐久性ガルバリウム鋼板、「エスジーエル」を採用したメタル建材の横葺金属屋根「リファーナ」。美しい水平ラインも特長
※ガルバリウム鋼板®SエスGジーLエルは日鉄鋼板株式会社の登録商標です。

日鉄鋼板グループのメタル建材は、超高耐久性ガルバリウム鋼板、「エスジーエルʀ」を採用した横葺金属屋根「リファーナ」の販売を強化している。

エスジーエルは、ガルバリウム鋼板をベースに革新的な耐食性向上を実現した「超高耐久性ガルバリウム鋼板」。厳しい環境下においてもガルバリウム鋼板の3倍超の耐食性を持つ。このエスジーエルを採用することで、海岸以遠500mの条件下で、穴あき25年、赤錆20年、塗膜20年保証、カラーで穴あき25年、赤さび15年、塗膜15年、変退色15年保証を実現した。

金属屋根材の横方向のジョイントには、簡単に重ね合わせられる。ハゼ嵌合方式を採用。雨水などの浸入もシャットアウトし、優れた防水性能を発揮する。加えて、耐熱性のポリスチレンボードを鋼板に裏打ちすることで、日射などによる劣化を低減する。美しい水平ラインも特長だ。立体感のあるすっきりとした横葺きにV型ウェーブの凹凸で屋根面に表情を持たせた。また、本体厚みが最大20mmの段葺き形状により、重厚感のある葺き上がりを実現する。

「築20年以上が経過した住宅の改修のタイミングと重なり、金属屋根のカバー工法の需要は底堅く推移している。スレート屋根材の葺き替えは、天候も気にする必要があるが、カバー工法では既存屋根があるので、葺き替えよりも安心感がある」(同社)。

屋根の長寿命化は下地から
ルーフィング高性能化、構法の見直しも

住宅ストックが増加し、住宅の長寿命化のニーズが高まる中で、屋根の長寿命化も求められている。

近年の台風被害を見ると、屋根の野地のほか、棟や軒先などが雨の浸透で腐朽し、屋根を留める釘の保持力が低下し、強風に煽られて屋根材がめくれるといった事故が起きている。こうした事故を解消し、より長期の住宅使用に耐える屋根はどうあるべきなのか。屋根材にとどまらず、ルーフィングの高性能化や、野地下地も含めた構法の見直しを図ることで、屋根の長寿命化を目指す取り組みも活発化してきている。

屋根の耐久性は、ルーフィングを抜きに語ることはできない。屋根の下地材として、雨水などを屋根裏に入ることを防ぐ重要な建材である。

戸建住宅などにおいて9割以上の圧倒的なシェアを持つのがアスファルトルーフィングで、優れた防水性とコストで幅広く採用されてきた。しかし、高温で柔らかくなりすぎる、低温で固まり割れやすくなるといった面も持つ。そこで開発されたのが、アスファルトにポリマーなどを添加した改質アスファルトルーフィングだ。さらに基材も従来の原紙から合成不織布を使用するものなどが登場し、温度変化だけでなく、高い寸法安定性や伸びや曲げに強いといった性能の向上が図られてきた。

(一社)日本防水材料協会の推計によると、アスファルトルーフィング市場は減少傾向にあるなか、2017年度に改質アスファルトルーフィングのシェアが初めて一般的なアスファルトルーフィングを上回り半数以上となった。

住宅業界における住宅の品質や性能を追求する動きのなか、屋根下葺材においてもより高い耐久性を持つ製品への切り替えが進んでいるのである。

そして非アスファルトのルーフィングとして注目されるのが高分子系だ。合成樹脂系シートを使ったルーフィングの総称で、合成ゴム系、塩化ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系などさまざまな種類がある。

アスファルト系ルーフィングが圧倒的なシェアを持つなか、高分子系ルーフィングの普及は途についたばかり。しかし、アスファルトは原油を精製した後の残油であり、供給が不安定になるのではないかとの指摘があるなか、将来的な安定供給という面、また、高い耐久性という特性から高分子系への注目が高まっている。

耐用年数60年を実現 LCC低減に大きく貢献

田島ルーフィングが高い耐久性を求める声に対応して開発した「マスタールーフィング」は、耐用年数60年を持つ。表裏面に劣化防止層を設けることで、アスファルトの酸化劣化を防止し、経時変化で堅くなることを防ぐ。

これまで粘土瓦など高い耐久性を持つ屋根材であっても、下葺材の寿命により約30年で葺き替えなければならなかったが、それを60年に延ばすことができ、ライフサイクルコストの低減に大きく貢献する。コストは通常の改質アスファルトシートの6〜7倍程度となるが、長い目で見た時に十分なコストメリットを生むことができる。

引き合いは順調に増加しつつあるが、その中心は大手ハウスメーカー。「住宅の耐久性を高めていこうという意識が強い」(住建営業部・近藤聡副部長)ことが大きな要因だ。

同社は耐用年数30年の改質アスファルトルーフィング「ニューライナールーフィング」もラインアップするが、近年、中堅〜中小の住宅事業者において安価な改質アスファルトルーフィングからニューライナールーフィングへという動きも始まっているという。「ルーフィングは金額が大きなものではなく、従来品に比べてコストアップになる以上の効果が期待できる」ことから、耐久性を前面に強くアピールしていく。

同社住建営業部の売上高の約7割を占めるのが下葺材。今後、その強化を進める上でポイントになるのが屋根仕上材との一体販売だ。「屋根全体を長期にわたり美しく保つという戦略を構築中」で、今年中旬以降、新たな取り組みをスタートする考えだ。

特殊ポリマーによる自己止水機能 屋根材の変化に対応し非透湿に注力

セーレンの「ルーフラミテクトZ」は特殊ポリマーの層により自己止水機能を持つ

屋根市場において鋼板やシングルなどのシェアが高まるなか、セーレンは高分子系の非透湿ルーフィング材「ルーフラミテクトZ」の拡販に力を入れている。

海底ケーブルでも使用される特殊ポリマーで層を形成することで非アスファルト系ルーフィング材として初となる自己止水機能を持つ。特殊ポリマーが膨張することで釘穴などからの漏水をブロックする。また、低温時でも柔軟性を失わず高い止水力を発揮、熱劣化に対しても非常に強く30年想定する促進試験で高い耐久性を確認している。重量は1㎡当たり255gと一般的なアスファルトルーフィングに比べて非常に軽量だ。同社では、屋根に軽量化、耐久性が求められるなか、特に耐久性と止水効果を差別化ポイントとして打ち出している。

ただ、同社は透湿ルーフィング「ルーフラミテクトRX」を展開しているが、透湿ルーフィングに比べ非透湿ルーフィングにはJIS規格がなく、客観的な説得力を持って提案することが難しいことが大きな課題だ。セーレンでは、屋根材メーカーや屋根工事業者への提案、流通店への提案、また、ハウスメーカーへの提案などさまざまな戦略を進める。例えば、大手ハウスメーカー2社とそれぞれ暴露についての検証を行っている。

同社は、ルーフィングの売上目標10億円を目指す。

「アスファルト系ルーフィングに比べ多少価格が高くなることへの抵抗感をどのように払しょくできるか、スムーズに受け入れられるような仕組みづくりが重要」(環境・生活資材部門ハウジング資材販売部・杉田賢造部長)と、体制構築を急ぐ。

「通気下地屋根構法」を開発 目指すは80年無補修の下地

ケイミューが提案を強化する「通気下地屋根構法」のイメージ。通気層を設ける
ことで換気棟から湿気を速やかに排出する

ケイミューは、「通気下地屋根構法」を開発し提案を強化する。屋根に通気層を設けることで、屋根材裏側に入った雨水を軒先から排出し、換気棟から湿気を速やかに排出できる機能を持たせた。

また、屋根材の留め付けビスを横桟に留付けし、下葺材に貫通させないことにより雨水の浸入を防ぐ。屋根材を下地に直接取り付ける直張り構法を採用した屋根と、通気下地屋根構法を採用した屋根を用意して行った同社の実験では、後者の方が、屋根の空気層が、屋根裏からの熱の伝達を抑えて居住空間の心地よさを高める効果を確認。また夏場の熱上昇や冬場の結露を抑えて住宅内部が傷むことを抑制できることも確認した。

屋根材の葺き替え・差し替え時にも下葺材のはがれがなく、防水性の低下を防ぐ効果も期待できる。さらに、災害などによる万が一の屋根材本体の破損時にも、通気層から速やかに雨水を排出できるため、補修までの雨もれを抑制できるといったメリットも有している。こうして構造体である下地を健全に保つことで長寿命化し、下地の80年無補修を目指す。

省施工部材、プレカットなど
職人不足への対応も不可欠

深刻化する職人不足への対応も不可欠であり、屋根材メーカー各社は対応を強化する。近年は、職人不足により、災害復旧のための職人を確保できずに、復旧が思うように進まないケースも出てきている。
2018年、「今世紀最強」とも言われた台風21号が近畿地方を襲った。

特に大阪府での被害は甚大で、屋根が破損、吹き飛ばされるといった事故も多く発生した。しかし、直す職人が圧倒的に足りず、いまだにブルーシートに覆われた住宅も残っているという。

屋根材メーカーの担当者は、「災害復旧の対応で、全国から職人を集めようとしても、集められないくらい職人は減っている。今後、首都圏などの住宅が密集して建つエリアに、巨大台風が直撃すれば、より多くの住宅の屋根に甚大な被害が発生し、直す職人も足りずに復旧まで何年もかかる、といったことが懸念される。屋根を直すにしても、職人に負担がかからない、より軽微で簡単な方法を、業界全体で考えていく必要がある」と指摘する。

また、「特に瓦屋根の職人不足は深刻なレベルにある。2019年には台風19号が千葉に上陸し、瓦屋根が破損、吹き飛ばされる被害が広がったが、瓦屋根を載せて補修しようとしても、対応できる職人をほとんど確保できなかった。そのまま放置しても建物に悪影響を及ぼすため、よりスピーディに対応できる金属屋根が応急措置として採用された。とはいえ、金属屋根を施工する職人の高齢化も進んでおり、いかに若手を育成していくかは大きな課題」といった声も聞かれる。

意匠、品質を均一化する施工簡略化部材を拡充

屋根は、切り妻、寄棟など様々な形状があり、様々な形状に合わせて屋根材と棟、屋根材と軒先などの取り合い部に、職人が板金を加工して納めなければいけない箇所は多く、職人の大きな負担になっている。また、施工品質のばらつきも懸念される。

そこで、アイジー工業は、そうした箇所の部材の加工を簡略化できる専用部材を拡充し、職人の負荷低減を図る取り組みを進めている。2021年4月には軒先垂れ部分に折れ線を付けることで、曲げ加工をしやすくした専用部材「唐草G50」を発売する。軒先垂れ部分は、現場で職人が板金を加工して対しており、施工品質や意匠にばらつき生じやすい箇所だが、釘打ち箇所も一目でわかるように工夫しており、施工のスピードアップ、施工品質の向上につながる。

1梱包を軽量化 よりコンパクトな金属屋根材も

ニチハは、金属屋根材の梱包量の軽量化や、短尺の金属屋根材のラインアップで、施工負担の軽減に取り組む。
これまで金属屋根材の1梱包当たり、8枚の屋根材入りで、重量は31kgだったが、2020年か12月から、1梱包当たり、6枚入り、24kgのものを用意した。

「現場では、梱包したまま、屋根の上まで持ち上げ作業するため、1梱包当たりの重量を軽くすることでより扱いやすくなる」(同社)。

また、これまで長さ10尺(約3m)の金属屋根材しか製造していなかったが、2020年12月から、6尺(約1.8m)の金属屋根材を新たにラインアップした。

「狭小地などの現場でも、取り回ししやすいなど、現場作業の効率化にも配慮した」(同社)。

屋根材をプレカットして納入 住宅事業者に有償で提供

ケイミューは、住友林業と連携して、スレート屋根材をプレカットして納める取り組みをスタートした。

住友林業の住宅の屋根は約8割がカラーベスト屋根で、そのうち8割(約5000棟)が寄棟(よせむね)となっている。登り隅や、屋根面が切り替わる谷がある全物件をプレカット化の対象とし、屋根施工の省力化を図る。

ケイミューは2020年8月に小田原工場、10月に滋賀工場に屋根材のプレカット設備を導入。図面情報からケイミューがカラーベストの積算・割付・プレカットを実施し、施工店や施工現場まで納品を行う。順次、対象エリア拡大し、2021年10月からカラーベスト屋根材対象の全棟で、有償でプレカット対応する。大規模な屋根材のプレカット納入は業界初の取り組みになる。

将来的には、住友林業だけでなく、「屋根材のプレカットの価値を認めていただける住宅事業者に有償で対応していきたい」(同社)考えだ。

時代の要請で、屋根関連メーカー各社は商品開発を加速させ、性能競争は激化し、住宅屋根市場は大きな変革期に入っている。

新しい時代の住宅の屋根はどうあるべきなのか。各社の動きから目が離せない状況が続きそうだ。