どうなる2021年の住宅マーケット②
戸建住宅市場 / 賃貸住宅市場 / 分譲マンション市場 / リフォーム・リノベーション市場
2021年の幕が上がった。
コロナ一色であったといっていい2020年を経て、新たな年はどのような一年になるのだろうか。
人口減少、少子・高齢化、環境対策への強い要請など社会的な環境変化に加え、新型コロナウイルスの蔓延は住生活産業に劇的な変化を促そうとしている。
新設住宅着工はいよいよ70万戸時代に突入しそうで、新築をベースとした市場はその姿を大きく変えつつあり、既存住宅の取引量が増大している。
また、東京一極集中にストップがかかり、郊外への移住が顕在化し始めた。
一方、環境対策や自然災害対策などにより、省エネや耐震など住宅の性能向上はこれまで以上に強く求められそうだ。
特に空き家問題も踏まえ、既存住宅の利活用、更新が大きな課題となっている。
戸建からマンション、既存住宅流通、移住住替え、省エネや災害対策など、成長の鍵はどこにあるのか──。
【戸建住宅市場】2021の着工数は回復へ 減税、経済対策が消費を後押し
2021年の戸建住宅の着工数は回復に向かいそうだ。
住宅ローン減税の2年間延長や最大100万ポイントが付与される「グリーン住宅ポイント」が住宅需要を後押しする。
20年の新設住宅着工数は1〜10月までで67万8899戸。季節調整値の年率で80万2000戸と辛うじて70万戸台は阻止できる見通しだ。着工数のおよそ半分を占める戸建住宅をみると、持ち家は10月までで21万4259戸で前年比11.8%減。戸建分譲は前年同期に比べ11.7%少ない10万8066戸となっている。
言うまでもなく大幅減の原因は、新型コロナウイルス感染拡大による春先の展示場閉鎖などによる受注ストップが大きく響いている。もともと、19年10月に10%へ引き上げられた消費税の影響を受け、多くのメーカーで序盤は苦しいスタートを切った。
その後、3月以降、新型コロナによる外出自粛や4、5月の緊急事態宣言発出を受け、主戦場である展示場での売込みができなかった。展示場での売込みができなかった間に、各社はWebを使った販売ツールなどを立ち上げ、客との接点を保つ取り組みを行い、夏以降、受注は回復傾向に。テレワークなど在宅時間の増加に伴い、戸建住宅を求める一次取得者が受注を支えた。
21年は着工数は微増か
21年の戸建住宅のマーケットはどうなるのか。建設経済研究所が3カ月ごとにまとめる「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によると、20年度の全体の住宅着工戸数を79万7000戸と予測。その上で21年度は80万2000戸と20年度比で0.7%増を見通す。「徐々に回復する見込みであるが、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化や、雇用情勢の悪化等により、回復のスピードは緩やかなものとなると見込まれる」とみる。持ち家については前年度比0.2%増の25万6000戸、戸建分譲については同1.3%増の24万6000戸と、それぞれ予測する。暦年ベースでの予測値はないものの、こうした見方は21年でも当てはまる。
20年の緊急事態宣言解除後に住宅需要をけん引したのは首都圏を中心とした戸建分譲だ。外出自粛などで“強制的”な在宅勤務が急速に進み、これまでくつろぐ場であった家に仕事場が入り込み、「今すぐ戸建住宅がほしい」と急きょ住宅取得に動いた一次取得者が、戸建住宅の購入ムードを作った。そのムードが注文住宅にも伝播。分譲がまず下げ止まり、それを追いかける形で注文が底を打った住宅メーカーが目立った。
家計簿アプリ「おカネレコ」を提供するスマートアイデアが実施した「住宅購入・住宅ローンに関する意識調査によると、コロナ拡大前と比べて住宅購入に対する意識が「変化した」と回答したのは全体の12.4%。どのような意識の変化があったかを尋ねたところ、「自宅で過ごす時間が増えたため、快適さを求めて購入を検討するようになった」「感染予防のためにも一部屋が広い家が良い」といった回答が多くあった。
一方で、「景気に影響があり収入減が予見されているため、ローンを組むことについては以前よりも慎重に検討している、購入しない方向に変わった」という回答も多い。21年の住宅需要は、こうした購入に慎重な消費者のマインドをどうやって刺激するかだ。
21年度税制改正では、住宅ローン減税の入居期限の22年末までの延長や対象床面積条件の40㎡以上への緩和が盛り込まれた。
また、経済対策では、省エネ性能に優れた住宅購入に対しては最大で100万円相当のポイントが付与される「グリーン住宅ポイント」制度も創設された。住団連の阿部俊則会長は「税制改正や経済対策が住宅消費を後押しし、21年の戸建の住宅着工の回復」を期待する。
税制改正と経済支援で消費者の“財布の紐”を緩くする環境は整備されつつある中、注文、分譲戸建て、それぞれの需要はどう動くのか。建設経済研究所は四半期ごとの着工数の伸び率を見通している(図2)。
注文住宅で鍵となるのは建て替え需要の回復だ。20年の受注を支えた中心的な役割を果たしたのは一次取得者。言い換えると、建て替え割合の高い住宅メーカーは業績の回復が遅れている。「コロナ禍で、この時期に建て替えなくてもいい」というムードが20年は色濃くあり、21年にどこまで、このムードが和らぐかが回復の鍵を握る。
分譲は土地の取得が鍵
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