2020.12.3

全国陶器瓦工業組合連合会 樅山朋久 理事長(栄四郎瓦社長)

生産体制を盤石に、サプライチェーンの見直し急務

──瓦屋根の現状を教えてください。

日本の人口構成や住宅需要の減少に伴う落ち込み以上に減少している。住宅着工数の減少に伴う需要の減少は避けては通れないが、まだまだ瓦の需要は根強くあると思っています。ただ、減少が続くと、今後、生産体制にも影響が及んでくると思っています。

仮に、ある仕入れ業者が廃業しても、今は他の仕入れ業者があるが、業界がどんどん小さくなるとその選択肢が減り、サプライチェーンが小さくなることで、将来的に瓦が作れなくなってしまいます。生産できたとしても、今までのような価格では作れなくなってしまう。住宅向けは、あまり変わっていないが、寺社向けはどんどん減っている。一部特殊なものなると、値段は高くなってきています。

粘土の調達は、瓦業界だけでなく、ほかの産業にも依存しているところがあります。瓦を造るために粘土を掘っているものもありますが、一部の粘土だと、例えば名古屋に郊外住宅団地や大きな商業施設を作るとき、山を削って、その時にいらない粘土がいっぱい出ます。処分みたいな形でこちらが引き取っているのもあり、それが将来、人口減少で商業施設ができなくなると造成地も減り、粘土の供給元がなくなってしまうことを心配しています。現状、非常に安価な材料を使っており、いろいろな産業の関連の中で成り立っています。今までの先輩たちのおかげで築き上げた流れの中で、安く供給できる体制を整えてきただけに、今後のサプライチェーンを考えなければなりません。

また、粘土瓦需要の減少は、住宅の大きさとも関係しています。住宅に使われる粘土瓦のシェアはあまり変わっていませんが、建物が小さくなり、1軒当たりに使う枚数が減っています。30、40年前だと1軒で3000枚ぐらい使われていましたが、今は800枚とか900枚。昔は大きい家だと7000、8000枚使っていたが、今は1200枚くらいです。盤が2割ぐらい大きくなったり、形が簡素化したりしているのも要因ですね。

──自然災害が相次ぎ、粘土瓦へのマイナスのイメージが心配ですが。

粘土瓦の出荷数の推移

風評被害は、あると思います。ガイドライン工法で施工すれば粘土瓦は決して弱いものではないのですが、1つ問題があります。地震や台風などで被害を受けた粘土瓦の修理が現状では追い付いていません。職人が少なく、災害が起きてしまうと、2、3年は放っておかれてしまうという、事態が出ています。瓦業界全体としての改善点だと認識しています。

屋根工事は、それほど儲かるものではないので、新築を常に回していることが多いため、災害が起きても修理は二の次とするケースが増えています。昨年の台風で、大きな被害を受けた千葉では、新築を優先する姿勢が鮮明に出ていました。自然災害で瓦に被害が出たら、2、3年は直してもらえないというイメージが需要減退を招かなければいいと思っています。

──これまで業界で推進してきたガイドラインによる工法が義務付けされますが。

被害を受けてから修理まで2、3年かかるという状況が、ガイドライン工法の義務付けで、台風で瓦が飛ばされるというそもそものところを抑えることで、被害が発生しないということを期待しています。

──ただ、自然災害での被害は既存住宅の瓦で発生しています。

もちろん、災害時でなければ、ガイドライン並みの工事をすることは可能なので、希望する住まい手があれば、対応できるでしょう。しかし、修理をするにも費用が掛かるし、なかなか災害にならないと、そういう仕事がでてこない。どうしても災害に遭ってからということになってしまうのでしょう。

──今後の業界の展望を聞かせてください。

粘土瓦の需要自体がなくなることはありません。性能や耐久性などでは、他の屋根材にない特徴もあります。それに対して、各社が取り組まないといけないのは、生産量が少なくなる中、どうやって原価を抑えるかです。原価があまり高くなると、瓦そのものが使われなくなります。原価を少しでも抑え、需要に対して、どう応えていくのかを知恵を出し合い考えなければならないと思っています。

(聞き手=川畑悟史)