変わる応急仮設住宅

“移動式仮設”がクローズアップ

近年、大規模な自然災害が相次いでいる。平成22年度から令和元年度までで半壊以上の住家被害が1000戸以上の災害は東日本大震災をはじめ13災害に上る。令和2年も熊本県などに大きな被害をもたらした「令和2年7月豪雨」が発生。死者・行方不明者80人超、家屋被害は全半壊だけで6000戸に及んだ。今年は新型コロナウイルス感染症という、これまでにない問題も発生し、これまで以上に避難生活から仮設期の暮らしへのスピーディーな移行が求められる。
応急仮設住宅は、「建設型」での対応が行われていたが、災害被害の拡大にともなってより多くの住宅が必要になったことで「みなし仮設」とよばれる「賃貸型」が導入、その活用が広がった。そして、今、注目を集めているのがトレーラーハウスやムービングハウスなどの移動式仮設住宅だ。
今後、南海トラフや首都直下などの大地震による想像を絶するほど大規模な家屋被害も予想される。それだけに仮設期の住宅供給をどうするのかを平時の今から考えなければならない。移動式仮設住宅は、プレハブや木造などの仮設住宅、民間住宅などを借り上げる「みなし住宅」に次ぐ3つ目の柱になるのか──。移動式仮設住宅の可能性を探った。

災害広域化に備え、求められる数、速さ、居住性

1000戸以上の住宅全半壊10年で14災害
新型コロナで避難所依存は危険

東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号から1年が過ぎた。13都県に大雨特別警報が発せられ、神奈川県箱根町で総雨量1000mmに達するなど、各地で記録的な大雨に。全国約70河川120カ所以上で堤防が決壊した。気象庁が「令和元年東日本台風」と命名した、この台風による人的被害は100人を超えた。391市区町村で災害救助法が適用され、住宅の全半壊だけでおよそ3万3000戸に上った。今なお7000人を超える人が避難生活を送っている。

災害関連死を含め死者・行方不明者が2万2000人を超えた東日本大震災のあった平成22年度から令和元年度までに発生した自然災害のうち、半壊以上の住宅被害が1000戸以上に上った災害は13ある(表1・総務省調べ)。

今年も自然災害は相次ぎ、7月に熊本県などを襲った「令和2年7月豪雨」では死者・行方不明者が80人超、住宅の全半壊被害だけで約6000戸となった。住宅を失った被災者は避難所暮らしを余儀なくされるが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の不安から、自治体の避難所対応にも変化が起きた。人と人とが密にならないよう、自治体では体育館で世帯ごとに一定の距離を確保。それでも避難所生活者の中から陽性反応が出るなど、これまで以上に早期に避難所から出られる環境整備が求められている。

令和2年7月豪雨から応急修理制度との併給可能に

自然災害に遭い、不幸にも避難所暮らしとなった場合、自宅再建をしたり、災害公営住宅などの本設住宅(恒久住宅)に移ったりするまで仮住まいの時期が「仮設期」である。仮設期の住まいとしては、応急仮設住宅や公的賃貸住宅などへの一時入居、住宅の応急修理制度などがある。それぞれ被災者は、その後の恒久的な住まいを考えながら仮設期を送ることになる。

応急仮設住宅に入居するためには法律上、全壊・大規模半壊など、被害が大きく修理できないことや長期にわたり住居に居住困難などの条件が定められている。これまで住宅被害はあるものの修理すれば可能な住宅を持つ被災者が「応急修理制度」を利用した場合、応急仮設住宅の入居はできなかった。近年は業者不足から修理が長期化するケースや避難所へ行かず、壊れた自宅に住み続けるケースもある。1000戸以上の半壊以上の住宅が、東日本大震災からわずか10年で14災害を記録する中、応急修理制度と応急仮設住宅との併用不可について改善を求める声が上がっていた。

この課題に対して今年7月、内閣府は運用を見直した。応急修理制度を活用しても、自宅が半壊以上で、修理期間が1カ月超となることを条件に、災害発生日から最長6カ月間の仮設住宅とみなし仮設住宅の一時入居を認めた。令和2年7月豪雨からの適用を認めており、今後ますます応急仮設住宅の供給量と供給スピードが求められそうだ。

居住環境の変化で求められる“質”


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