ワーケーション、その可能性

地域創生、働き方改革の切り札となるか

今、「ワーケーション」が急速にクローズアップされている。国がその推進を打ち出し、自治体はワーケーションへの取り組みを進める。各地でワークスポットの整備が相次ぎ、その誘致が始まっている。コロナ禍、働き方改革、地方創生…さまざまな文脈で語られるワーケーションは裾野が広く、住宅・不動産業界にとっても大きなビジネスチャンスとなりそうだ。

通信インフラの整備により、在宅でのテレワーク、サテライトオフィスの展開が可能になった。今、都市部のオフィスに出社しなくても仕事ができる環境が整っている。事実、IT系の企業などでは社員のテレワークや、本社の地方移転、サテライトオフィスの展開が進んでいる。

一方、働き方関連法で年次休暇の年5日取得が義務付けされ、諸外国に比べて遅れていた大型休暇の取得が促された。

仕事(ワーク)と、休暇(バケーション)を組み合わせる「ワーケーション」が広がる環境が整ってきたのである。

ワーケーション拡大の一つの流れが自治体の積極的な取り組みだ。ワーケーション先進県と言われる和歌山県が他県に先駆けて取り組みを開始したのは平成29年度。Work×Innovation×Collaborationをテーマに企業向けのワーケーションを推進した。

そして令和元年11月にワーケーション自治体協議会(会長:仁坂吉伸和歌山県知事)が設立される。65団体でスタートした同協議会は11月2日時点で127団体(1道15県111市町村)にまで拡大、自治体がワーケーションにかける期待がうかがえる。

自治体がワーケーションに取り組む理由はさまざまだが、大きなポイントの一つが地域の活性化である。ワーケーションに訪れるユーザーによる消費増は言うまでもなく、加えて、関係人口の増加によるさまざまな効果が期待できる。多くの自治体は高齢化や人口減少といった課題を抱え、移住・定住策の取り組みも進められるが、国全体の人口減少が続くなか限界もある。そこで定住だけでなく関係人口の増加に力を入れる自治体も増えてきた。

ワーケーションを通じて、みずからのまちにかかわる企業、人を増やし活性化につなげたい。こうした企業・人の誘致は観光をはじめとする地域産業の活性化や新ビジネスの創出が期待でき、空き家・空き地、遊休施設などの活用にもつなげることができる。

第三の選択肢として期待
生産性向上などのメリットも

もう一つ、コロナ禍がワーケーションの拡大を強く後押しした。感染拡大対策として在宅ワークが急速に広がり、先の見えないなか、未だ在宅をせざるを得ない人も多くいる。こうしたなかで在宅ワークによる社員のストレス、また、効率の低下など、企業にとって福利厚生や人材育成など人事面での課題が浮上してきた。加えて、東京オリンピック開催による首都圏の“密”も不安視された。企業が職場、自宅に次ぐ第三の場を求めたのである。


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