若人の新規事業で賑わう熱海銀座通り商店街 空きスペースの2階に宿泊、オフィスなど

case9. 静岡県熱海市①

静岡県熱海市、JR熱海駅から徒歩15分の熱海銀座商店街では空き店舗をリノベーションして起業に繋ぐ試みが実施されている。

最新のひとつが商店街の裏道に入る角に2019年11月に誕生したゲストハウス「ロマンス座カド」だ。そばに映画館ロマンス座があったことからついた名前で、もとは呉服店。バブル崩壊で閉まり、そのあと店舗と住居が入居して使われていたところだ。

ロマンス座カドの宿の一室。「ゆっくした部屋が欲しい」という観光客の声から生まれた

入口は商店の裏口の勝手口のよう。ところが一歩中に入ると別世界。空間も広く、床はフローリング。大きなベッドがあり、ゆったりとしている。シングルルーム3部屋、ツインルーム2部屋、ロフトルーム1部屋の3タイプがある。それぞれデザインが異なり、どの部屋を使うかという楽しみもある。

商店街から別世界に来たような演出を施したロマンス座カドの宿

部屋の外を連携させ街そのものが宿という仕組みで、手書きのマップが用意され、商店街のカフェやジェラート工房、居酒屋、喫茶店、料理店などを利用してもらう。日帰りの温泉の案内もある。オプションのガイド付きツアーもある。海も近い。

フロントは近くのゲストハウスMARUYA。カフェ、バーがあり食事もできる。朝食はご飯が出て、目の前にある干物店から好きな干物をチョイスして食べるという趣向。街そのもののヒトとコトが出会えるように考えられている。泊まった人が街の魅力に気づき二拠点居住や移住、起業に繋ぐことをコンセプトにしている。

「ロマンス座カド」はゲストハウスMARUYAを利用した人たちの中から、「ゆったりした部屋が欲しい」という要望から生まれたものだ。商店街の別の建物でありながら一つの宿という趣向も面白い。

ロマンス座カドの入り口。商店街の路地裏にある。小さなアクリル板の看板がついている

ゲストハウスMARUYAが生まれたのは2015年。2013年に町で行われた街の空き店舗の活用を討議し具体化するリノベーションスクールがきっかけとなり、参加者のプランから誕生した。もとはパチンコ店で長い間空きスペースになっていた。持ち主の小倉一郎さんも参加し、プロの建築家・工務店に加えて70名がDIYを実施。スクールの関係者を中心に20名が投資。政策金融公庫、クラウドファンディングも入れて4000万円をかけて生まれ変わった。こうして街全体を繋ぐ連携の動きが始まった。

運営は株式会社machimori。代表は市来広一郎さん。市来さんは熱海出身。大学卒業後、東京のコンサルタント会社に就職。2007年に熱海になんとか活気を戻したいとUターンした。熱海はバブル崩壊後、観光客が激減。ホテル閉館や商店街の閉店が目立つようになった。市来さんは起業での町づくりを目指した。まずは地域の魅力の再発見からと熱海の人を紹介するサイトづくりから始まり、田んぼ体験やミカン収穫をする「チーム里庭」を実施し、市と連携の移住者支援体験プログラムにもつながった。そこから地域の人がガイドで町を案内する「熱海温泉玉手箱(オンたま)」に発展。2009年のことだ。熱海市と観光協会の協力を得て路地裏昭和レトロ散歩、海辺でシーカヤックなど体験プログラムを3年間実施した。またモノづくりをする人が参加し地域に賑わいを創るマルシェも2か月ごとに行った。これらの活動がベースになって、街ぐるみを宿にするというゲストハウスの下地ができたというわけだ。

2010年に、株式会社machimoriを設立し、エリア一体型ファシリティ・マネジメント(経営的な視点による施設管理)事業を始めた。ビルのエレベーターのメンテナンスを一括してエリアで契約して安くする。その一部の収益で店舗開発に投資するところから始まった。

2012年に干物屋「釜鶴」二見一輝瑠(ひかる)さんと空き店舗を活用したカフェCAFERoCAをオープン。2017年にシェア店舗RoCAへ業態転換させ、そこにジェラート工房など新たな起業メンバーを呼び込んできた経緯がある。

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