インタビュー |  2020.7.17

大和ハウス工業、テレワークに対応した住まいを業界でいち早く提案

開発から販売までわずか2カ月 初のテレワークだけでつくった商品

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で“強制的”に進んだテレワーク。今後の浸透が予想される中、大和ハウス工業は住宅業界でいち早く、快適に在宅勤務ができる住まいの提案を始めた。商品化までの全てをテレワークで対応。開発から販売にこぎつけるまでに要した時間はわずか2カ月と異例のスピードだ。開発の中心メンバーである本社住宅商品開発部住宅商品戦略グループの太田洋介主任と住宅事業推進部営業統括部の佐藤文主任に、商品化までの道のりを聞いた。


──商品開発のきっかけは。

佐藤 トップダウンです。5月中には形にして出せ、というお題だけを4月にいただきました。

緊急事態宣言が発令されて、自分たちもテレワークをやらなければならないし、需要はあるだろうと思っていました。今までもスタディーコーナーを提案してきましたが、それではあまり面白みがないなと。社内にはアンケートシステムがあり、回答された意見を商品化の参考にしています。今回はそのアンケートシステムを使い、テレワークでどういうことに困っているかを尋ねたところ、3600人から回答がありました。その中で目立った困りごとは「音」でした。例えば、オンライン会議で、「子どもの声が入る」というのがありました。また、音に気を遣わなければならないためオンライン会議を「家族が嫌がる」という声もありました。声が入ると困るので、「子どもを叱れない」という意見もありました。

また、男女別で見ると、面白いぐらい男性は部屋がないことを困ったことに挙げていました。女性はテレワークをしながら子どもとのつながりを意識しており、フリーアンサーでは「家にいるならば家事をやれ」とか「家にいるのにお昼をつくらなければならないの」とか厳しい意見が男性に寄せられました。パパとママでニーズが全く異なることがアンケートから分かりました。

太田 その結果として、今回は2つの提案型商品をつくりました。普通は分かりやすさなどから1つの商品を提案するのですが、男女でニーズにそれだけの違いがあり、1つだけだと満足しない人もいるので、それなら2つを提案しようと考えました。

1つは、仕事に集中できる防音仕様のクローズド空間「快適ワークプレイス」。もう1つが仕事と家事・子育てを両立したい人のセミクローズ空間「つながりワークピット」です。

仕事に集中できる防音仕様のクローズド空間「快適ワークプレイス」

──快適ワークプレイスは男性のニーズということですね。

太田 そうです。ここには、当社が開発した快適防音室「奏でる家」の技術を採用し、室内の響きのバランスを整える独自の音響アイテム「コーナーチューン」を設けました。実は3畳ぐらいまでの狭い部屋でオンライン会議をすると、部屋の中で声が反響します。相手側からすると聞きにくい状態になります。もし、一般の在来で同じような部屋を作ったら、反響して「なんだこれは」ということになってしまうかもしれません。これまでに培った技術が今回の提案に生かされています。

家は、今まで「くつろぐ」ことを中心に考えてきました。今回、初めて本気で「家で仕事する」ということをテーマに開発しました。防音だけではなく、仕事モード・リラックスモードなど、気分によって調整できる3光色切り替えLED照明(昼白色・電球色・温白色)やオフィスデスクと同等の奥行き60㎝のデスクも取りそろえました。

佐藤 これまで提案してきたスタディーコーナーの机の奥行きは45㎝です。今回、テレワークをして実感したのは奥行きの必要性です。プリントアウトをしないため、オンライン会議で共有する資料がしっかり見られるように大きなディスプレイを置いたりすると、45㎝では足りません。また、長時間座っても疲れないように、オフィスにあるキャスター付きの椅子が必要になります。キャスターがあると、フローリングを傷つけます。とりあえずと思ってラグを敷くと、巻き込みます。そうした点を解消するため、カーペット仕様にするなど、細かい点にも配慮しています。

──「つながりワークピット」とはどういう商品ですか。

仕事と家事・子育てを両立したい人のセミクローズ空間「つながりワークピット」

佐藤 仕事と家事・子育てを効率よく両立させるために、リビングとつなげたマルチスペースです。室内窓で家族の気配を感じつつ、ドアの開閉でオンとオフの切り替えを可能にしています。快適ワークプレイスと同様に照明や奥行き60㎝のデスクも取りそろえています。これまでの「つながり」というイメージですと、「開けっ放し」でしたが、今回はあえて扉を付けました。その扉に「会議中」という札を付けたり、扉を開けて行ってきますと部屋に入るだけで、子どもは、パパは今仕事中であることが分かるというのです。これもアンケートで分かったことですが、子どもにとって、扉の存在は大きいようです。

──それぞれタイプの異なった商品ですが、開発から販売までにかかった期間はどれくらいですか。

太田 2カ月です。提案型商品の販売は大体、年間で1、2本です。それが今回、2カ月で販売にまでこぎつけたのはテレワークによる業務が円滑に進んだためです。

私は大阪におり、通常、東京と打ち合わせをする場合は、テレビ会議を使います。テレビ会議ができる部屋は数が限られるため、部屋を押さえなければなりません。例えば毎週木曜日の1時からなど。そうすると、会議は週1回になり、その会議中に出てきた課題なども、その場に関係者がいなければ、「では次回」ということになります。

テレワークだと、これまでのように来週まで待つこともなく、すぐにオンライン会議をつないで結論を出したり、課題を解決したりすることができました。ここのスピードがすごく変わりました。これまでのやり方ですと、商品販売にいたるまで秋ぐらいまでかかっていたかもしれません。そのぐらいのやりとりが、この2カ月にぎゅっとつまった感じです。

佐藤 当社が遅れていたかも知れませんが、これまでは共有しているサーバーを誰かがいじっていると書き込むことができませんでした。当社はマイクロソフトの「Teams」を使っているのですが、それだと、共同で作業ができる点も、時間短縮につながりました。また、もともと今年開催予定だった東京五輪・パラリンピックを見据えて、昨年夏からお試しテレワークをやっていたことも、今回のテレワークにはプラスに働いています。

太田 関係メンバーで専用のチャットを立ち上げたこともスムーズな業務につながりました。会話の1対1がなくなったことは大きいですね。
佐藤 確かに。今までAとBでやり取りしていたことを、CがBからその情報を新たに聞き、打ち合わせを進めてきたのですが、それがチャットで関係メンバー全てに情報が共有されているので、AとBの話は解決したことが、みんなにすぐに伝わる。それぞれの課題も共有できることはすごいメリットですね。

──テレワークだけで商品化した第一号ということですね。

太田 そうです。商品の勉強会も「Teams」でやっています。最後リリースしてから、営業担当者に向けた勉強会をするのですが、今までですと、会議室に集まるか、現地に出掛け、それぞれ説明していました。

佐藤 すごい昔は1カ月かけて全国行脚ですね。それがオンラインでの会議が導入され、それでも視聴人数に限りがあるので、何十回レベルでやっていました。今回は、その人数がさらに拡大され、念のため2回勉強会をしましたが、本来ならば1回で済みます。現場ですと、支店に集まるのも大変で、展示場ごとに待機させたりします。それが今回は、どこにいても勉強会に参加できるようになりました。移動疲れや経費もかからないわけです。

──販売の手応えはどうでしょう。

佐藤 6月からの販売ですが、評判は高いです。テレワークの経験をされた人が多い首都圏や都市部で期待できそうです。当社営業担当者は全員、今回テレワークを経験しているので、自分の言葉でお客さまに提案できるのは強みですね。

太田 実体験、体験談をもとにつくった商品です。もともと“超生産性空間”を目指して開発に着手しました。オフィスより生産性が上がる快適な空間が実現できたと考えています。

(聞き手:川畑悟史)

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