Well‐beingにあかりは不可欠 住宅設計の初期段階から検討を
スキャンデックス 取締役COO 伊東久美子 Ph.D.
人工的なあかりで日照不足を補うライティングセラピー。季節性の鬱(SAD)を解消する療法として欧米で注目され、研究が進んでいる。デンマークの照明ブランド、レ・クリントなどを扱うスキャンデックスの伊東久美子取締役COOは、「ライフスタイルの変化から現代人は日照不足になりやすいリスクを抱えている。ライティングセラピーの知見を応用することで、住まいをより心地よい空間へと変えることができる」と話す。
ライティングセラピーと住まい【後編】
──ライティングセラピーの知見を住まいなどに応用するための研究は進んでいるのでしょうか。
1997年以降、世界中であかりに関する研究が増えています。「あかりと生産性」、「あかりとWell︲being」、「自然光の効果」などの研究が盛んに行われており、あかりの重要性が浮き彫りになっています。主に学術用途での検索を対象とするGoogle Scholarで、「effects of natural light」というキーワードで検索すると、170万件近い論文、出版物などがヒットします。ただ、日本ではまだ研究が少なく、米国、北欧での研究が盛んです。最近では、組織での生産性を高めるために、どのように効果的にあかりを使うか、といった研究も増えています。
住まいなどに、どのようにライティングセラピーの知見が活かせるのか。そのヒントは、デンマークにあります。デンマークは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念である、Well︲beingが高く、幸福度ナンバーワンの国といわれています。居心地の良い時間や空間をあらわす「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉もあるほどです。デンマークの人たちにとって、Well︲beingという考え方は、生まれながら当たり前にあるものであり、文化的なバックボーンになっています。「健康を目的とした人間中心のデザイン」を追求するグローバル企業がデンマークに多く存在するのは、そうした文化的背景が大きく影響しているといわれています。
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