より高く、より広く 中大規模木造が都市を変える

住宅着工の減少が見込まれる中で、中大規模木造(非住宅木造)市場が成長分野として注目を集める。
国産材の利用拡大を目的とした公共建築物木材利用促進法など政策面の後押しがあり中大規模建築の木造化が進むほか、SDGsといった観点からも木材利用、木造建築への関心が高まっている。
様々なプレイヤーが市場に参入し、より高く、より広く、中大規模木造が拡大。
建てやすくする技術開発も加速している。

ウッドファーストの時代
木造建築に熱視線

利用期を迎える国産材の需要先として、さらに、今後減少が見込まれる新築戸建住宅に代わる新たな市場として中大規模木造建築への注目度が高まっている。2010年に施行された公共建築物等木材利用促進法など、木材活用を促す法整備も進む。

2019年6月に施行された改正建築基準法では、「木造建築物等に係わる制限の合理化」を柱の一つとして位置づける。

建築基準法では、高さや面積の制限、用途制限、防火地域・準防火地域の制限にかかわるそれぞれの条文で耐火要件を定めている。従来は、この3つの要件のいずれか1つでも該当する建築物は、一律、仕様規定により耐火建築物とすることが求められたが、改正建基法では、要求性能を明確にして性能規定化し、耐火建築物と同等の性能を持つ、準耐火構造などの建築物を、耐火建築物とニアリーイコールとして建てられるようにした。

具体的には、細かな防火区画や、消防力なども評価し、軒裏、外壁、開口部といった躯体外周の耐火性能を高めることで、建物内部の制限を緩和し、準耐火構造で建てられるようにする。これにより強化石こうボード1枚の被覆で対応できるようになり、施工の手間を大幅に軽減できるほか、建物内部の梁や柱に、燃えしろ設計の構造材を使用することも可能で、木材を現しで使いやすくなる。

木造建築を建てやすくするための一連の法改正の集大成と言えるもので、今後、中大規模木造市場の拡大に向けて強力な追い風になることは間違いない。

森林環境譲与税がスタート
豊富な財源を木造化にも

また、2019年度から「森林環境税」と「森林環境譲与税」という新制度がスタートした。森林環境税は国税として個人住民税に年額1000円が加算され、市町村から徴収される。森林環境税は、全額がいったん国の譲与税配布金特別会計に預け入れられたうえで、市町村、都道府県に森林環境譲与税として配分され、間伐などの森林整備の費用などに充てられる。20年度から400億円、24年度から全額の600億円が地方自治体に配分されることが決定している。注目したいのは森林のない都市部にも森林環境譲与税が配分されることだ。豊富な財源をいかに森林整備に寄与するものへ有効活用するのか。建築物の木造化、木質化を図ることは、取り組みやすく、成果もわかりやすいだけに、ニーズは高まっていきそうだ。


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