公共建築に地域材を使う(下)

さまざまな工夫で課題に対応(2)

利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。

地元材利用のリスクをどう減らせるか

単年事業として計画されることが多い公共建築に、地元産の木材をタイムリーに供給するにはどうすればいいのか。前回、紹介した松島庁舎(熊本県上天草市)のケースでは、地元木材業界が行政と連携して情報収集に努め、どのくらいの木材(この場合は集成材用ラミナ)が必要になるのかを事前に把握し、発注を受ける前から原木の調達や製材を始めていた。

基金でストックされていた材料も使用して内装木質化を実施した(小田原市酒匂小で)

このように供給サイドが見切り発車で準備を進めるケースは他にもあり、それには的確な情報を得ることと、施主である自治体との信頼関係を構築することが必須となる。ただ、それでも事前の手当てにかかった経費を回収するまでのタイムラグにより、金利負担は発生するし、元請けのゼネコンから発注を受ける際に価格交渉を持ちかけられる可能性もある。要するに木材業者側にとっては、資金リスクを抱えてのプロジェクトになることは避けられない。

一方、施主の自治体としても、せっかく地元の木材を公共建築に利用しようとしても、期間の限られる単年度事業としての取り回しでは、材料の調達リスクを払拭できずに計画を練らなければならなくなる。

そうしたリスクを回避して、地元産木材をスムーズに調達するためのユニークな仕組みを導入したのが神奈川県小田原市である。


この記事は会員限定記事です。
無料会員になると続きをお読みいただけます。

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。