(一財)日本建築センターがSDGsガイドライン策定、普及推進
中小工務店でもSDGsに取り組む動き加速へ
中小工務店でもSDGsの考え方を経営に取り入れる動きが出始めた。子連れでも働くことができるカンガルー出勤などを実現し、女性社員の定職率を向上させた工務店もある。(一財)日本建築センターはガイドラインを策定し、取り組みの推進に乗り出した。
SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された2030年を目標年とした国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など17のゴールと、このゴールを目指すための行動指針として169のターゲット、その進捗を測るための232の指標から構成される。
国内では住宅メーカーをはじめ大手企業の多くは、このSDGsを踏まえた経営に動いている。背景にあるのは「サプライチェーンや金融市場から締め出されることを防ぐ」(大手住宅メーカー)ためだ。
海外企業との連携や資金調達にあまり縁のない中小工務店は、これまで別世界の事としてとらえる向きが強かったが、地域密着の工務店だからこそSDGsを経営に活かせるという考え方が広がってきた。先進的な中小工務店が実際にSDGsを経営に活かし、そのメリットも明らかになってきている。
岐阜県のSUNSHOW GROUPでは女性スタッフが出産しても働きやすい職場づくりを推進。子どもを連れて勤務できる「カンガルー出勤」の導入やキッズルームの整備、全社的に子育ての輪も広がり、ノー残業デーも取り入れた。それにより働きやすい職場となり、女性社員の定職率が向上し多様な人材の確保も可能になったという。
(一社)JBN・全国工務店協会では、これまで委員会においてSDGsに取り組んできたが、新年度からは協会全体で強く推進し、加盟各社の取り組みを促していく考えだ。
先進的な事例により、SDGsに取り組む機運が高まる一方、中小工務店には「具体的に何をすればいいのかわからない」といった声も少なくない。
こうしたなかで(一財)日本建築センターは、ガイドライン「これからの工務店経営とSDGs」をまとめ、工務店のSDGsへの推進に乗り出した。
5つのステップでSDGsを実践
ガイドラインでは、①SDGsの理解の浸透②過去の取り組みの振り返りと経営課題の洗い出し(後づけマッピング)③経営ビジョンと優先的取組事項の設定(先づけマッピング)④経営計画の策定と実行⑤フローアップと情報発信──の5つのステップを設定。ステップごとに応じた対策を示しながら、SDGsに取り組む道筋のヒントを与えている。
ガイドラインでは、それぞれのステップの事例を紹介。それによると、①では、福岡県のエコワークスが社員それぞれにSDGsへの理解を深めてもらおうと、有識者を招いた勉強会を開催。福岡県の健康住宅では、自社の取り組み事例を社内で共有するため、情報共有ツールを利用し記事配信している。
②は、自社の過去の取り組みを振り返り、SDGsに紐づけ、経営課題の洗い出しをしている足立建築を取り上げている。ここでは、10年以上前から耐震性能や温熱環境性能などにこだわった家づくりを実践。居住環境やライフサイクルコストなどを意識した住宅の高断熱・高気密・高耐久化ではSDGsの3と7に紐づけるなどの作業を行っている。
③の先づけマッピングでは、優先的取り組み事項の設定として、SUNSHOW GROUPの女性活躍推進を重視した働き方改革を紹介。④もSUNSHOW GROUPの取り組みに触れている。ここでは女性活躍推進を関連するSDGsのゴールとして5の「ジェンダー平等を実現しよう」をゴールに設定。自社内のインディケーター(指標)と目標として、社会女性社員率55%を2030年までに目指し維持することを掲げている。⑤では自社の取り組みを顧客や地域社会に理解してもらうための情報発信だ。東京都の相羽建設では集会場を意識したショールームを開設したことで、地域や住宅の困りごとが気軽に相談できる地域密着型の工務店となり、リフォーム受注件数が増加した。
こうして、それぞれの状況に応じて、SDGsへ取り組むことができるのが、このガイドラインの特長だ。2月12日には、このガイドライン策定などを報告するシンポジウムを開催。策定に関わった村上周三・東京大学名誉教授は「事業の再整備や重要度の位置付けなどをSDGsの目標に関連付けてほしい」と強調した。
SDGsへの取り組みの有無が工務店の生き残りに直結する時代が、すぐそこに来ている。
(一財)日本建築センターが、中小の工務店を対象にSDGs導入のガイドラインとして編集した「これからの工務店経営とSDGs」(編集:建築関連産業とSDGs委員会)。先行的に昨年2月に発刊された「建築産業にとってのSDGs導入のためのガイドライン」の姉妹編だ。
今回出版された「これからの工務店経営とSDGs」では、これからの工務店経営における、SDGs導入のプロセスをイメージして「工務店はなぜSDGsに取り組むべきなのか」、「いかにしてSDGsに取り組むか」を分かりやすく解説している。
巻末には、工務店のSDGs導入の手掛かりとなる「工務店が取り組むSDGsの実践事例」、「後づけマッピングの事例」、「先づけマッピングの事例」、「指標設定の事例」を収録しており、資料的価値も高い。
価格は2500円(消費税別)
リンク先は各社のサイトです。内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
-
マーベックス・アキレス “断熱等級6”の時代の真の差別化ポイントを解説
2024.11.21
-
YKK AP・パラマウント硝子工業・日本住環境・アキレス 断熱気密の施工をプロが解説
2024.11.21
-
JCA・デコス エバーフィールド・久原氏が石川の木造応急仮設住宅について講演
2024.11.12