住宅 |  2020.2.5

IoT防災情報システムを東京23区で運用開始へ

「発災後」の情報を把握し、的確な災害対応図る

旭化成と旭化成ホームズが開発する、地震発生時に個別建物被害の即時推定を可能とする「IoT防災情報システム LONGLIFE AEDGiS(ロングライフイージス)」が2021年度から運用を始める。発災後の住まい手への新たな対応として注目されそうだ。


ロングライフイージスは国立研究開発法人防災科学技術研究所の協力を得て、開発を手掛けてきた。防災科研は、微動クラウド解析システム、浅部・深部統合地盤モデル、リアルタイム被害推定システム・センサーネットワークなどに関する知見を持つ。この知見をいかして整備した高密度な地盤データベースと、一定数のヘーベルハウスに設置する地震計が観測する地震動データ、地震動伝達に関する高速演算手法を組み合わせ、建物の被害レベルなどを推定する。旭化成ホームズは「地震発生後10分〜2時間程度で、そのエリアに建つ全てのヘーベルハウス・メゾンの邸別の建物被害レベルや液状化発生状況を推定することができる」と話す。

「IoT防災情報システム LONGLIFE AEDGiS(ロングライフイージス)」の概略図

大地震発生時には、どこでどのような被害が起きているのかを正確かつ迅速に把握できることが、その後の応急・復旧・復興のスピードにも大きく影響する。今回の開発は、対象建物すべてに地震計を設置することなく数多くの建物の被害状況を即時に推定できるため、低コストかつ短期間で運用を開始することができ、災害時の応急・復旧サポート体制のさらなる強化が期待されるという。

4月から東京23区を対象に運用を開始。約2㎞間隔で約160カ所のヘーベルハウスに地震計を順次設置する。同時に、50mメッシュ単位の地盤データベースを整備する。この東京23区の例に説明すると仕組みはこうだ。約2キロ間隔でヘーベルハウスの基礎に設置された地震計が計測した地震動データと、地盤データベースを組みわせ、計測地の直下深部に位置する基盤面の地震動情報に変換する(引き戻し)。一定間隔で地震計を設置することで、地震計を設置していない建物も、どの程度基盤面を伝播したかを把握することで地震動を算出する。それを地盤データベースと組み合わせ、対象建物の地表(基礎)部における地震動を推定(増幅)。それをヘーベルハウスの建物構造情報と組み合わせることで、被害状態を個別建物ごとに即時に推定する。旭化成ホームズは、2021年度末までに、23区内全域に建つ約4万棟のヘーベルハウス・メゾンの地震発生時の即時被害推定を運用開始できるよう準備を進める。また、その有効性の検証と運用エリア拡大の準備を並行して実施し、2023年度末をめどにヘーベルハウス販売エリア全域への展開を目指す。

このシステムで得られる高密度な地震動情報は、同社以外の個別建物、構造物、インフラ施設等の即時被害推定や、液状化発生状況のリアルタイム推定などにも応用できる可能性があるという。「この取組みで得られる知見を、今後、官民含めた外部へのデータ提供や協業も視野に入れ、広く世の中のレジリエンス向上への貢献を目指して活用していく」(同社)と話す。

震災対策の新たな切り口

なぜ、今回、旭化成ホームズは「ロングライフイージス」を開発・運用を始めることにしたのか ̄ ̄。これまで住宅メーカーが行ってきた防災サービスは建物の耐震性や、発災後ではエネルギーでのレジリエンス機能の強化、水の貯留、食料の備蓄などが中心の提案だ。しかし、実際に被災した住まい手の心理はどうだろうか。大規模な揺れに襲われた住まい手が、まず考えるのは「自宅は安全か」ということだろう。住まい手は、自宅の安全性を自ら確認できない。そこで重要となるのが発災後の客観的な情報だ。開発を手掛けた同社住宅総合技術研究所プリンシパルエキスパートの小山雅人氏は「客観的な情報を提供するためにも、まずは情報を把握することが大切になる」と話す。

昨年10月の「台風19号」による水害被害をはじめ、被災した住まい手は、住宅メーカーに修繕などを求める。実は、こうした問い合わせへの対応が、現状把握や迅速な復旧作業を妨げる原因とも指摘されている。それを防ぐために必要なのが、発災後のそれぞれの住宅の状況を住宅メーカーが正確に把握し、住まい手に客観的な情報を先手・先手で伝えることだ。

今回、同社が開発した「ロングライフイージス」は、客観的な情報を迅速に把握する方法の一つといっていい。大きな揺れが起き、各住宅の被害状況を把握出来たら、同社は被害の大きかった住まい手を優先に連絡し、少しでも不安を取り除く。「こちらから情報を発信することで住まい手は安心する」(小山氏)。その後に行う復旧作業への住まい手の理解も進み、計画的な作業が期待できる。