パナソニック ホームズ 大阪市で「特区民泊」活用し、宿泊事業へ
インバウンド需要狙う、土地活用の提案に幅
パナソニック ホームズは、大阪市の「特区民泊」を活用した宿泊事業に乗り出した。自由度の高い特区民泊での事業を展開することで、土地活用の提案の幅を広げる。
旺盛なインバウンド需要を背景に、全国各地で宿泊施設も増加している。いわゆる民泊新法の施行で、住宅を宿泊施設として提供する「民泊」が、新たな土地活用として注目される。ただ、宿泊での営業日数が180日などの制限があるため、事業の採算性で二の足を踏むケースも少なくない。同社が既に宿泊事業を展開している東京でも、土地の有効活用としてオーナーが手掛ける民泊は旅館業の位置付けだ。
国家戦略特区での特区民泊では、営業日数の縛りがない。また、旅館業だと、建築基準法上「ホテルまたは旅館」の扱いのため、住居専用地域での建築はできないが、特区民泊になると、共同住宅などの扱いになるため、住居専用地域での建築も可能となる。民泊事業を展開する上で足かせになる「旅館業」と「民泊新法」の課題をクリアしたのが「特区民泊」ということになろう。
同社が、大阪市の特区民泊を利用した宿泊事業は、同社グループがオーナーから土地・建物を一括借り上げの上、宿泊事業者へ転貸する独自の事業スキーム「インバウンド・リンクシステム®」を採用する。将来的には賃貸マンションへの転用を可能とする設計にしており、需要変動のリスクにも対応する。同市中央区日本橋に、第1号の施工請負実例として開業した「BON Condo Namba Nipponbashi(ボンコンド なんばにっぽんばし)」では、子会社のパナソニック ホームズ不動産が、30年間一括借り上げし、特区民泊を運営する「REAH Technologies(リアテクノロジーズ)」へ10 年間転貸するスキームを組んだ。
近年高まるインバウンド需要への国策対応として、民泊新法などの宿泊事業関連の法令が整備される中、昨年、パナソニックホームズは東京・大阪の都市部の土地オーナーを中心に宿泊事業のテストマーケティングを実施。当初目標だった18年度受注棟数( 10 棟)を約9カ月で達成するなど事業性の感触をつかんだことから、2019年の春、東京で本格参入に踏み切った。一方、大阪府での外国人宿泊者数は、東京都に次いで2位。今後、万博などもあり、多人数向けの宿泊施設の需要の高まりも見込まれている。
2019年4〜11月度の受注棟数は23棟、受注金額は32億円となり、それぞれ当初掲げた2019年度の目標(受注13棟・受注金額54億円)を期中に達成できる見通しだ。「今後も需要の伸長が見込める大阪市における特区民泊をはじめ、関西においても宿泊事業を本格展開することで、更なる成長を目指す」(同社)。21年度で受注金額100億円を計画する。
無人でチェックイン
パナ製品の設備・家電を導入
「ボンコンド なんばにっぽんばし」は、大阪メトロ「日本橋駅」および「近鉄日本橋駅」から徒歩約2分の場所に立地する全54室・地上10階建てで、在来工法で建設した。約40平方メートルの広さを確保した客室は、キッチンやダブルベッド2台を備え、家族やグループで訪日するケースが多い外国人旅行者が最大で5人宿泊できる設えになっている。
特区民泊での設備のため、館内にフロントは見当たらない。あるのはタブレット型のタッチパネル。この画面を使って、客はチェックイン、チェックアウトの手続きを行う。パスポートをかざし、顔認証で本人確認がとれたら、チェックインは終了。客室の鍵はスマートロックに。チェックアウトも、顔認証などの作業が終われば終了だ。支払いは予約時に決済しているため、お金もいらない。また、ロビーには、パナソニック製の大型のプロジェクターが設置され、大阪の景色などを映し出し、宿泊客を楽しませる演出も用意する。
また、全室にパナソニック製の家電製品を設置。水まわり設備や室内建具もパナソニック製品を採用している。同社は「パナソニックが提供する宿泊施設として、宿泊利用者が、泊まる(stay)・使う(use)・感じる(feel)過程を通し“cool Japanの空間”を体感いただける提案を行っている」と強調する。
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