2019.12.9

大和ハウス工業、多世代交流軸に団地再生を始動

コンビニ併設型コミュニティー施設を提案

大和ハウス工業が手掛ける、1970年代から開発してきた郊外型既存戸建住宅団地の再耕(再生)事業「リブネスタウンプロジェクト」が動き出した。団地再生の具体例として注目を集めそうだ。


「リブネスプロジェクト」第一弾の舞台となるのは神奈川県横浜市栄区にある「上郷ネオポリス」。開発面積は約46万平方メートルで、現在、総戸数868戸、約2000人が暮らしている。1970年に開発を始めた郊外型戸建住宅団地で、1972年の販売開始から40年以上経過し、高齢化率は約50%の団地に。人口減少や度重なる店舗の閉店などの課題が山積し、解決に向けた取り組みが必要となっている。2014年から同社は、住民との意見交換を開始。2016年には同社と自治会が「上郷ネオポリスにおける持続可能なまちづくりの実現に資する諸活動についての協定(まちづくり協定)」を締結し、明治大学や東京大学の有識者、一般社団法人高齢者住宅協会も加わった「上郷ネオポリスまちづくり協議会」を発足させ、団地再生に向け、話し合いをしてきた。

高度経済成長を背景に、「上郷ネオポリス」のような住宅団地が相次いで開発。国交省によると、全国に住宅団地はおよそ3000団地あり、100ha以上の大規模住宅団地のうち公的住宅団地を含まないものが7割あり、30年以上経過しているところが3分の1強あった。この数字は2017年時点のものであることから、さらに団地の“高齢化”は進む。このため、団地再生は開発を手掛けてきた民間会社などの本気度が問われる取組みだ。

もちろんハード面での対策は必要となるが、それ以上に問題とされているのが、高齢化によるまちの衰退、また、年齢層の偏りから派生するコミュニティーの断絶だ。いかに若い世代を引き入れるか、価値観が異なる世代間のコミュニティーをいかに育てるか、多世代交流が団地再生の成功の試金石となる。今回の大和ハウス工業の取組みは、その1つの具体例として注目に値する。

「上郷ネオポリス」再生の鍵となるコンビニ併設型コミュニティー施設「野七里(のしちり)テラス」は、地域住民よりサポートメンバーとして、ボランティアを募集し、施設内外の美観整備やイベントの企画・運営を行う。ボランティアには地域コインを渡し、併設されたコンビニ「ローソン」で買い物ができる仕組み。また、子どもも手軽に買い物ができるよう、10円や50円などのお菓子を通常のコンビニより多めにそろえている。子どもが立ち寄れば、その親もコンビニに顔を出す。そして、そこに集まるお年寄りとも顔を会わせる機会も増え、多世代交流のきっかけづくりの場となるわけだ。

同社は「これからはデベロップからマネジメント」とまちづくりをとらえており、今後の取組みに注目が集まる。

コンビニ併設型コミュニティー施設「野七里(のしちり)テラス」の外観