超省エネ住宅、コスパ&タイパ、ウェルネス志向 時代を映す、新たな住まいの提案

 

カーボンニュートラルの推進、少子高齢化、物価高騰などの社会変化とともに、住宅市場が縮小していく中で、住宅各社は多様なニーズに応じた住宅商品を生み出し続けている。
2025年度に発売された新商品を振り返り、住宅開発や時代のトレンドをあらためて探る。

GX志向型がスタンダードに
省エネハイスペック商品も続々

25年度は、25年4月の省エネ基準適合義務化という大きな変化を迎えた。さらに国土交通省、環境省、経済産業省の3省連携による「住宅省エネ2025キャンペーン」中の「子育てグリーン住宅支援事業」の新設住宅対象に「GX志向型住宅」が設けられたこともあり、業界全体として環境性能への取り組みが加速した。

「GX志向型住宅」は断熱等性能等級6以上、再エネを除く一次エネルギー消費量削減率35%以上、再エネ含む一次エネ消費量削減率100%以上、HEMS導入の4つの条件に適合する住宅。一戸あたり160万円と手厚い補助が受けられることもあり、25年5月14日のスタートからすぐに申請が殺到し、約2ヶ月あまりで予算上限500億円に達した。こうした中、GX志向型に対応する住宅新商品の発売が相次いだ。

積水化学工業は、24年から首都圏を中心に展開する省エネ・子育てパッケージ「Tシリーズ」でGX志向型に対応していたが、新たに要件を満たす都市向け鉄骨3階建て住宅パッケージ「デシオ‒GXモデル」を、25年4月から発売した。同社は24年1月から平屋と2階建て戸建の全商品で断熱等級6仕様を標準化しているが、3階建て住宅にも展開し、GX志向型住宅の対応をさらに拡大した。

AQ Groupも、GX志向型に対応した新商品「AQ Grand(エーキューグラン)」を投入した。オリジナル構法「AQダイナミック構法」を採用した大空間かつ高耐震の住まいに加え、太陽光発電システムや断熱等級6などの補助金を受けやすい環境性能を備えた。

商品ではなく、仕様としてGX志向型に対応する企業も多くみられた。住友林業は、独自のビッグフレーム構法の20周年を機にGX志向型住宅に対応する特別仕様を加えた。木造の質感とデザイン性を維持しつつ、トリプルガラス樹脂サッシを標準採用することで、大開口の開放感と断熱等級6(一部地域では7)を両立させた。

大和ハウス工業は、25年7月から全注文住宅の断熱等級6の標準化をスタートした。GX志向型住宅への対応のみならず、27年4月から適用開始となるGX ZEHへの対応もできる体制を早々に整えた。

さらに先をいく環境配慮の住宅として、旭化成ホームズは、住宅の生涯CO2収支ゼロを目指す戸建住宅「earth‒tect(アーステクト)」を発売した。建設時から解体までの累積CO2排出量を算出し、HEBEL HAUS由来の環境価値(非化石証書)を用いてエンボディドカーボンに充当する考えを採用。さらに実質再エネ電力を20年間供給することでオペレーショナルカーボンを削減。建設後60年でのカーボンニュートラルを目指す。ZEHやGX志向型住宅のような居住時の排出ゼロにとどまらず、住宅のライフサイクル全体で排出量削減を目指す新たな脱炭素化住宅モデルとして、普及が期待される。

26年度もGX志向型住宅への補助が継続されるため、対応した商品や仕様のニーズは続くとみられる。

住宅の生涯CO2収支ゼロを目指す旭化成ホームズの「earth-tect」

「コスパ」「タイパ」訴求は継続
コンパクトで価格抑えるトレンドも

住宅の環境性能が底上げされる一方で、建築コストの上昇は避けられない課題となっている。これに対し、一次取得層をターゲットとした合理的な提案も活発化した。住宅価格の上昇と可処分時間の不足に悩む現代人のニーズを背景に、「コスパ」「タイパ」を意識した規格住宅のトレンドも継続している。価格やプランの合理性を追求した商品が特に地方の事業者から相次いで投入された。 

ハーバーハウス(新潟県新潟市)は、月々の支払いを家賃並みに抑えながら高品質のデザインと性能を実現した規格住宅商品「Box(ボックス)」の販売を開始した。コンパクトながら、使い勝手を考慮した延床面積約20坪の3プランは税込1499万円から。自己資金0円、ボーナス払い0円でも、月々の3万円台からの返済計画を可能とし、購入のハードルを下げている。従来のファミリー層だけでなく、ひとり親、DINKS、自宅で教室を開きたい人など、多様な人生に対応するプランを用意した。

低価格で「月々3万円からの返済」を訴求するハーバーハウスの規格住宅商品「Box」

AVANTIA(名古屋市)は、規格型注文住宅の「SELECT&CUSTOM」を全面リニューアルし、家づくりの基本費用を一つの価格にまとめた「ワンプライス」の新プランを販売開始した。同社が販売する土地に家を建てる場合、1990万円(税込)のワンプライスで建築可能とした。建物本体価格、地盤調査費、付帯工事費、外構工事費、各種申請・図面作成費、アフターサービス・各種保証など、家づくりに必要な基本費用も含んでおり、複雑な打ち合わせや追加費用に対する不安の払しょくを訴求している。

「ウェルビーイング」に着目
心身の健康を意識した提案続々

近年は、住まいと健康に関する研究が進み、どのような家でどのように住めば心身の健康につながるのか、様々なエビデンスが発表され始めている。こうした住まいと健康の関連への注目を背景に「健康」や「ウェルビーイング」をコンセプトに掲げた商品が続々登場した。

Lib Work(熊本県山鹿市)は、基礎化粧品ドモホルンリンクルなどで知られる再春館製薬所とタッグを組み、自己回復力を育むことをテーマとした住宅商品「再春館製薬所の家~Positive Age House~」を開発した。「住むだけで健康になり、まるで薬のように心と体を整えてくれる家」(再春館製薬所西川正明代表取締役CEO)を目指し、眠りや目覚めの時間に合わせて色や明るさを変化させる照明を導入、生活空間にあえて段差を設け自然に身体を動かせるよう配慮するなど、心身の健康を促す様々な工夫を凝らした。

ヤマダホームズは、「癒しと未来が、ひとつになる家。」とコンセプトとし、建売住宅「Feelwell(フィーウェル)」シリーズで、サイエンス社の新型シャワーヘッドと湯船を標準装備にした。シャワーヘッドは水圧を強くしたり、水を霧状に散布したり選択できる。直径が0.003ミリメートルの細かい泡が出る湯船は肌をこすらなくても毛穴汚れやにおいを落とす効果が期待できる。

官民学連携で超高齢化社会に応じた住まいを探るAVANTIAの平屋住宅ブランド「RAN with(ランウィズ)

AVANTIA(名古屋市)は、超高齢化社会の住まいのあり方を検証する平屋住宅ブランド「RAN with(ランウィズ)」を開発した。「高齢になっても住み替えをしないで住み続けられる家」をコンセプトとし、共同研究契約を結んだ日本福祉大学、国立長寿医療研究センター(長寿研)が監修した。ライフステージに応じて柔軟に対応できる設計や、将来の車椅子や介護ロボット利用を想定した生活動線などが特徴だ。岐阜市に完成予定のモデルハウスでは、29年3月までの約3年間、実際の生活動作を通じた検証を行う。

多様なニーズ背景にコンパクト平屋が増加
「ちょうどいい」住まいを訴求

心身の豊かさを追求する動きは、建物の形状にも現れている。特に、効率的な動線と開放感を両立できる「平屋」への支持は、全世代的な広がりを見せている。平屋住宅の割合は年々増加しており、24年には新築住宅の約17%を占め、過去10年間で2倍以上に増加している。こうした平屋ニーズを背景に25年度も様々な平屋商品が登場したが、中でも目立ったのがコンパクト平屋の提案だ。家族構成や働き方が多様化し、住宅価格も高騰する状況下で、身の丈に合った「ちょうどいい住まい」を各社が訴求している。

クレバリーホームが平屋商品「Granshare(グランシェア)」に加えたコンパクト平屋プラン

クレバリーホームは、平屋商品「Granshare(グランシェア)」に、コンパクト平屋プランを追加した。「シンプルで美しく、暮らしやすい平屋」というコンセプトをそのままに、現代の生活スタイルに合わせたサイズ・動線設計へアップデート。20坪前後の限られた面積の中でも、開放感・動線・収納を丁寧に整えた平屋設計を採用した。

LIFE QUARTET(三重県津市)は、規格住宅の人気商品「BUNGALOW(バンガロー)」に狭小プランを加えた。ロフトも含めた延床面積は72.45㎡で、片流れ屋根を活かした勾配天井が特徴。各居室へはLDKを介して入る動線とし、自然と家族と顔を合わせられるようにした。

WITHDOM Group(福岡県福岡市)は、北庭を前提に設計する〝外の居間〟を日常化する小さな平屋ブランド「TARIL」の提供を開始した。夏季に直射日光を受けにくい北側の半日陰を“外の居間”として計画することで、視線の抜け・プライバシー配慮などを確保。コンパクトな経済設計と仕入れのコストカットにより、1980万円〜(税抜)という低価格を実現した。

パナソニック ホームズは地域商品強化
積水化学工業は高額フラッグシップ商品

大手住宅メーカー各社では、富裕層の底堅い需要を狙った高付加化価値・高額商品の強化が進む。

その高額帯戦略で遅れを取っていた積水化学工業は、鉄骨戸建注文住宅の新たな旗艦モデル「ELVIA(エルビア)」を開発した。価格は35坪で約5000万円強の設定。鉄骨ユニットならではのシンプル・ダイナミックな機能美を表現した外観デザイン、初の断熱等級7の実現、新開発の全館空調システムの導入など「今できるものをすべて盛り込んだ」(吉田匡秀プレジデント)もので、高価格帯の顧客増加につなげる狙いだ。

積水化学工業が富裕層向けに開発したフラッグシップモデル「ELVIA」

パナソニック ホームズは、独自戦略として「日本の家プロジェクト」を展開し、地域ごとの気候風土、暮らしの文化を盛り込んだ商品開発を進めている。

25年9月から販売開始したプロジェクト第一弾の滋賀県の地域商品「近江の家」は平屋で、自転車利用が盛んな地域性を考慮し、サイクルポートを設置、滋賀特有の「びわこ虫(ユスリカ)」対策として、室内で効率よく洗濯物を干せる「家事楽ドライピット」をキッチンの隣に配置するなど、地域に応じた様々な工夫を取り入れた。26年度までに全国15カ所で順次展開する予定で、地域密着ビジネスを強化していく。

パナソニック ホームズ「日本の家プロジェクト」の滋賀県地域商品「近江の家」のモデルハウス

26年度は、環境性能の底上げが定着する中で、さらなる差別化として「ライフサイクル全体での脱炭素」や、医学的知見に基づいた「ウェルビーイング」の具体化が加速すると予測される。また、補助金制度の継続を追い風に、GX性能を前提とした上で、地域特性や富裕層ニーズに特化した「高付加価値戦略」の成否が、各社のシェアを左右する鍵となるだろう。

2025年度 主な住宅新商品
2025年度 主な住宅新商品